限界希釈法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/14 19:30 UTC 版)
50%組織培養感染量(50% Tissue Culture Infective Dose: TCID50 )は、感染性のウイルス力価の尺度である。TCID50は接種された組織培養細胞の50%を殺す、あるいは細胞変性効果を生むのに必要なウイルスの量を定量する。TCID50は臨床研究などにおいてウイルスの致死量を決定する必要がある場合や、ウイルスがプラークを形成しない場合によく用いられる。組織培養での操作例として、宿主細胞を播種し、段階希釈したウイルスを添加、培養後、死滅した細胞(感染細胞)の割合を手動で観察する。各ウイルス希釈での割合を記録し、結果から数学的にTCID50を計算する。測定方法や測定原理の違いから、TCID50やPFU / ml、他の感染性アッセイの結果は等価ではない。この手法は、細胞の感染が必要であり、最大1週間かかる場合がある。 TCID50計算には、一般的に以下の2つの計算方法が使用される(EC50 、 IC50 、 LD50などの他のタイプの50%エンドポイントの計算にも使用される) スピアマン・カーバー法 リード・ミュンヒ法(英語版) 数学的には、TCID50で陰性だったウェルは0個のプラーク形成単位を表し、陽性だったウェルはそれぞれ1個以上のプラーク形成単位を表すので、予想されるPFUはTCID50の2分の1よりも若干大きくなる。ポアソン分布に基づくと、より正確な推定値が得られ、約0.69 PFU = 1 TCID50である。ポアソン分布は、一定の空間において、既知の平均発生確率で発生するランダムなイベントの発生回数を表す確率分布である。観測された陰性のウェルは感染イベントが0回発生したとみなされることから、P(0)は陰性のウェルの比率であり、mは体積あたりの感染単位の平均数(PFU / ml)であることから、P(0)= e-mである。 TCID50として表される力価の場合、P(0)= 0.5であるから、e-m= 0.5、すなわちm = -ln 0.5であり、これは約0.69と計算される。ただし、実際には、この関係は同じウイルスと細胞の組み合わせでも当てはまらないことがある。これは、2種類の測定法の測定条件が異なることや、ウイルスの感染力は細胞年齢、重層培地等に非常に影響を受けやすいことによる。しかし、次の文献では、この関係を異なる形で定義している。同じ細胞系を使用し、ウイルスがそれらの細胞上でプラークを形成し、プラーク形成を阻害するような処置を加えないと仮定すると、1mlのウイルスストックはTCID50の約半分の数のプラーク形成単位(PFU)を持つことが予想される。これは推定に過ぎないが、添加した細胞層の50%に感染する限界希釈液では、感染した細胞層に最初に1つのプラークができると予想されることが多いという根拠に基づいている。場合によっては、偶然にも2つ以上のプラークが形成されることもあるので、実際のPFU数は実験的に決定されるべきである。(ATCC - Converting TCID50 to plaque forming units PFU-124を参照)
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