長谷寺本
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1991年6月21日、国の重要文化財に指定された巻子本。所有は奈良県の長谷寺。 本巻は、その現存最古写本として著名なもので、体裁は後補白茶蒲公英文様蝋牋表紙を装した巻子本である。料紙には天地に横墨界を施した黄蘗染楮紙(打紙)を用い、1紙約19行、1行17字前後に一筆に書写している。本文は作法と式目部からなり、巻頭に「僻連抄」の内題を掲げ「連歌は歌の雑躰なり」云々の序四三行がある。ついで「一、連歌は心よりおこりてみつからまなふへし」以下、連歌の学び方、才学、初心、心、詞、てにをは、賦物、嫌物について、連歌の種々の体、会席、参会者、勝負、風躰、寄合、発句、脇句の詠み方など一六項目にわたって、その作法を説き、その後に弘安の新式による連歌式目を掲げ、末に「十二月題」として季題を添えている。 巻末には二条良基本奥書以下についで「觀應貳年七月日書寫之」の書写奥書があって、本巻がその成立の6年後に書写された本であることを明らかにしている。このほか、「康永四年三月下旬之比、自鷲尾邊不慮所尋得也」の本奥書からみて、この本が「あるゐ中人」の求めに応じて作られたことが知られ、また「写本云」として「末代亀鏡誠不可有比類者也、尤以可奉賞翫之」とあり、この『僻連抄』が連歌師の間で珍重されていたことなどが判明する。なお、本巻の巻末二紙の紙背には「十種供養式」が書写されている。 本写本と『連理秘抄』本文を比較すると、『僻連抄』には発句、脇句、てにをはの用い方などに実例をあげて詳説するほか、連歌の風体については救済、順覚、信昭を例にした記述があるなど『連理秘抄』にみえない部分があるなどの相違が認められる。『連理秘抄』に改訂される以前の『僻連抄』の伝本としては、他に近世の抄出本が知られるのみで、本巻はその唯一の古証本として注目される。
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