銀河の融合と楕円銀河の形成
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/02 23:24 UTC 版)
「銀河の形成と進化」の記事における「銀河の融合と楕円銀河の形成」の解説
最も質量の大きな銀河は楕円銀河である。銀河の中では、円盤銀河のように同じ方向に公転はせず、恒星はランダムな方向に向かって進んでいる。古い恒星から構成され、塵はほとんど含まれない。これまで観測された全ての楕円銀河は中心に超大質量ブラックホールを持ち、これらのブラックホールの質量は楕円銀河自体の質量と相関している。また、楕円銀河の遠端の恒星の速度を表すシグマと呼ばれる値とも相関している。楕円銀河は円盤は持たないが、円盤銀河の銀河バルジは楕円銀河のように見えることがある。銀河が多く集まった領域では、楕円銀河が多く見られる。 現在、楕円銀河は宇宙で最も進化した系であると考えられている。楕円銀河への進化の主要な原動力は、小さな銀河の融合であるという説は広く受け入れられている。これらの融合は非常に激しく、秒速500kmの速度で銀河同士が衝突することもしばしばある。 多くの銀河は、他の銀河と重力で結びついており、他の銀河の引力から逃れることはできない。銀河の大きさが同程度の時は、結果として生じた銀河はどちらとも似ていないものになる。同じくらいの大きさの銀河同士の衝突のイメージを描いたのが左図である。融合の間、両方の銀河の恒星や暗黒物質は、他方の銀河の影響を受ける。融合の最終段階に向けて、重力位置エネルギーや銀河の形が急速に変化し始め、恒星の軌道も大きく変化する。この過程は力学的緩和(violent relaxation)と呼ばれる。衝突中には秩序だった恒星の運動はランダムなエネルギーに代わり、結果として生じた銀河では恒星はランダムな方向に運動する。これが、楕円銀河で我々が見ている姿である。 融合した銀河は非常に多数の星形成の場にもなる。融合する銀河では、毎年太陽質量程度の数千個の新しい恒星が生まれており、これは銀河系で10個程度であるのと比べると非常に多い。銀河の融合で恒星同士が衝突することはほとんど無いが、巨大な分子雲は銀河の中心部に急速に落ち込み、他の分子雲と衝突する。これらの衝突によって、分子雲の密度が高まり、新しい恒星の誕生の場となる。この現象は近傍宇宙でも観測できるが、10億から100億年前に形成された今日見られる楕円銀河の形成過程においては、分子雲の量も多かったため、より盛んであった。また、銀河の中心部から離れた領域では、分子雲は相互に衝突し、この衝撃が新しい恒星の誕生の刺激となる。このような激しい過程の結果として、銀河が融合した後には新しい恒星の形成のための分子雲はほとんどなくなる。銀河が大きな衝突を起こし数十億年経過すると、銀河に若い恒星はほとんどなくなる。これが、今日我々が観測するような、若い恒星や分子雲をほとんど含まない楕円銀河の姿である。これは、楕円銀河が銀河の進化の最終的な姿であるためと考えられる。 局所銀河群では、銀河系とアンドロメダ銀河は重力的に結合し、現在急速に近づいている。この2つの銀河が衝突すると、重力の影響で大きく歪み、銀河系外空間にガスや塵、恒星をまき散らしながら、お互いを通り抜けると考えられている。2つの銀河は反対方向に飛び去り、やがて減速し、再び引かれあって再度衝突する。こうして最終的に両方の銀河は完全に融合し、ガスや塵が流れ出て新しい楕円銀河が形成されると考えられている。アンドロメダ銀河は実際に既に歪んでおり、端が巻いた形になっている。これは恐らく自身の伴銀河との相互作用によるものか、または近い過去に矮小楕円銀河と衝突したためであると考えられている。 今の時代にも、銀河団や超銀河団等の銀河の大規模構造は形成されつつある。 銀河系や他の銀河に対する理解はかなり進んできたが、銀河系の形成と進化に関する最も根源的な問いにはまだ暫定的な回答しか与えられていない。
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