金文銘鋳造技法の仮説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/29 03:19 UTC 版)
殷周金文は青銅器の内側に鋳込まれているが、どのようにして鋳型に銘を刻むのかは明確になっていない。青銅器の鋳造法そのものは、工房の発掘によって大量の鋳型が発見されたことから 粘土で原寸大の模型を作る 模型に粘土を被せて切り分け、これを外枠とする 模型を削り、内型(内范 中子)とする 内型(内范)に銘を入れる 范を組み立て、外型(外范)と内型(内范、中子)の隙間に銅の破片をいくつか挟ませる 溶かした銅を流し込む 冷えたら范を割り、青銅器を取り出す というプロセスは判明している。 しかし、内型(内范、中子)に銘を入れる工程は明らかになっていない。鋳込まれた銘は字画が窪んでおり、内型(内范、中子)に入れた段階では字画部分は盛り上がっている。この粘土を盛り上げる技法について、さまざまな仮説が立てられている。 泥状に溶いた粘土を塗り重ね、時間と手間をかけて盛り上げる これは清の金石学の権威、阮元の仮説だが、この仮説を実証した実験はない。 薄い粘土を内型(内范、中子)に貼り付け、余分な部分を削り取る ただ、実際の器には欠き取り作業中に必ずできる刀傷がない。 別に粘土板で銘文用の型を作っておき、それを内型(内范、中子)を削って埋め込む。 ただ、毛公鼎のように大きな曲面になった内面全面に入った銘文制作は困難である。これに対して、20世紀末期に立てられた仮説では なめし革に銘を刻み、柔らかい粘土を塗った内型(内范、中子)に転写する 方法が提唱され、実験の結果、銘を再現することに成功している。ただしこれに対しても、物的証拠がないことから仮説の域を出ない。 また、木片やなめし革などのテンプレートを流用して、器の銘と蓋の銘を同時に作ることができるにもかかわらず、器と蓋の銘が完全に一致する青銅器は一つも発見されておらず、器の銘と蓋の銘が別々に作られていることから、その仮説を否定する意見もある。
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