金剛薩埵との一体化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/10 15:29 UTC 版)
「絹本著色後醍醐天皇御像」の記事における「金剛薩埵との一体化」の解説
図像の後醍醐天皇は、右手に金剛杵(こんごうしょ、煩悩打破の象徴)、左手に金剛鈴(こんごうれい、諸尊の注意を引き歓喜させる法具)を持つ。この図像では特に、きっさきが五つに分かれた五鈷杵(ごこしょ)と五鈷鈴(ごこれい)であり、五智五仏(大日如来の五種の智慧)の表象である。また、八葉蓮華(はちようれんげ、「胎蔵界曼荼羅」という図様で大日如来が座す蓮)を敷いた座具の上に座っている。 この右手に金剛杵・左手に金剛鈴・下に八葉蓮華という構図は、金剛薩埵(こんごうさった、ヴァジュラサットヴァ)と同じである。金剛薩埵とは、「金剛石(不壊の石)のように堅固な勇猛心を持つ者」を意味する菩薩(仏の前段階にある修行者)であり、大日如来(宇宙の真理そのものである仏で、本地垂迹説では天皇家の祖神天照大神の本地(本体)とされる)に続く真言宗の第二祖である。仏と人の仲介者として、大日如来の教えを人間界に伝える役目を担うとされ、「仏にして仏に非ず人にして人に非ずという存在」である。 瑜祇灌頂は、その行の最中に自己を如来や菩薩と同じであると観じるため(『瑜祇灌頂私記』)、この図はまさに瑜祇灌頂の最中に後醍醐天皇が自身を金剛薩埵と一体化させた場面を表したものである。 なお、『瑜祇経』は真言密教の最秘の経典であり、瑜祇灌頂と同じく『瑜祇経』巻上に基づいて描かれる明王に愛染明王(あいぜんみょうおう)がいる。愛染明王は後醍醐天皇が最も尊崇した尊像でもある。愛染明王は金剛薩埵の所変(化身)であるので、内田啓一は、本作品は後醍醐天皇の愛染明王崇拝を描いた図でもあるのではないかとしている。
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