野生動物管理の新たな局面
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/03 21:09 UTC 版)
「野生動物管理」の記事における「野生動物管理の新たな局面」の解説
主に欧米で発展・確立した野生動物管理はアジアやアフリカなど世界の他地域にも拡大した。 20世紀後半から21世紀にかけて人間と野生動物との関係が複雑化したことで、野生動物管理の対象は狩猟動物の個体数だけでなく多種多様な野生動物種に拡大し、その目的も保全や保護を内包した複合的なものへと変わっていった。野生動物は人間によって絶滅の危機に追い込まれる被害者としての側面だけでなく、人間に対して大きな社会的・経済的被害を与える加害者の側面も注目され始めた。世界中で野生動物は農林業被害や人身被害、感染症の媒介、交通事故などに代表される人間との軋轢によって莫大な被害を引き起こしており、野生動物被害管理の重要性が増している。他に、人間にも自然生態系にも悪影響を与える外来種の存在は、被害者や加害者という二者択一の枠に収まらない問題を提起し、野生動物管理の在り方はリスクをいかにして予防・低減・代償するかを計画的に議論する形に修正された。単一の野生動物の種を中心に据えた管理のほかに、森林や湿原などある一定範囲の景観や生息地を基準とした生態系管理の重要性も認識されている。とくに近年ではこうした対象となる景観の範囲は、都市などの従来は野生動物の生息地としてみなされてこなかった人工的環境にも及ぶようになった。 管理の対象は野生動物や自然環境のみにとどまらず、被害を認識する人間の行動や価値観の管理に視点を置いた人間事象(human dimensions)という要素も注目を集めている。 近年の野生動物管理の発展の背景には分類学、生態学、動物行動学、遺伝学、獣医学といった分野の勃興・参入にともなう生物関連科学の進歩も大きく貢献している。これらの科学的知識や技術をもとにした目標の設定・計画の策定・モニタリングに基づいた仮説検証型のフィードバック管理(順応的管理)は客観的な野生動物管理を実現するうえで最適とされる。
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