酒、食酢
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/01/01 10:27 UTC 版)
清酒の醸造において、発酵途中での細菌汚染を腐造、濾過工程後の乳酸菌汚染を火落ちと呼ぶ。清酒酵母はジアセチルの還元能力は高いが、腐造や火落ちにより生じるジアセチル臭は「つわり香」「火落ち香」と呼ばれ、あってはならないものとされている。アセト乳酸生成を早期に終結させる、アセト乳酸の分解に要する期間を十分にとるなどの方法によりジアセチル臭発生を制御している。また、濾過後の酵母の添加や過酸化水素・活性炭処理などによりジアセチルを除去する方法も採られている。 ビール醸造の場合、前発酵段階の前半で生成したアセト乳酸は前発酵後期には減少しはじめる。発酵時の麦汁の温度が高めであったり、酸素の供給量が過剰だと酵母がバリンを消費し尽くし、バリンの持つアセト乳酸合成酵素に対する阻害効果が損なわれるため、アセト乳酸の生成が増える。このため、発酵開始時の温度を出来るだけ低めにする、酵母を一定限度以上増殖させないなどの対策が取られている。 ワイン醸造の場合は、1次発酵段階ではブドウ果汁の窒素分が少ないため酵母の増殖が早期に終了する。そのためアセト乳酸の生成も早期に終わり、ジアセチルは酵母によってアセトインに還元され、消失する。熟成段階においては、乳酸菌によるマロラクティック発酵によりジアセチルが生成する。赤ワインでは濃度4mg/L程度であれば香りの成分として有用であるが、清涼感が求められるシードルでは、ない方がよい香りとされている。 食酢においても、日本では「むれ香」「つわり香」と呼ばれ、特にドレッシング用では好ましくない匂いとされている。但し、寿司・漬物用の米酢ではわずかなジアセチル臭は好まれる。日常より匂いの強い発酵乳製品を摂取している欧米では、ドレッシング用でもジアセチル臭の強い酢が用いられる。また、中国でも肉料理に合うとして、ジアセチル臭の強い酢が使われている。
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