遺言の自由と遺留分
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/15 03:27 UTC 版)
西欧系諸法域には、被相続人が死因贈与又は遺贈により処分し得る財産の範囲を制限するか否かに関し、大別して三つの態度がある。一つ目は、被相続人の財産処分を全面的に認める態度(処分自由主義、遺言自由主義)である。十二表法時代のローマや近代のコモンロー諸法域がこれを採る。二つ目は、被相続人の財産処分を全面的に禁止する態度(処分禁止主義)である。フランク時代のゲルマン古法が初期にこれを採った。三つ目は、被相続人の財産処分に制限を加えて法定相続人にある程度の取得権を遺留(確保)する態度(処分制限主義、遺留分主義)である。 遺留分主義はさらに二つの系統に分けることができる。遺留分主義の一つ目の系統は、遺留分を強制相続分として構成する法制であり、ゲルマン法、フランス慣習法を経て、近代のフランス法、スイス法、日本法(平成30年(2018年)法律第72号による改正前の民法典)、韓国法に受け継がれた。遺留分主義の二つ目の系統は、遺留分を価値取得権(債権)として構成する法制であり、ユスティニアヌス法典を経て、近代のドイツ法、日本法(上記改正後の民法典)に受け継がれた。 遺言自由主義を採るコモンロー諸法域の中にも、近親者に一定の権利を保障するものが多くある。イギリスの1938年相続(家族条項)法は、遺言者の近親者に遺贈財産から扶養を受ける権利を認めた。アメリカの全ての州は、遺言者の配偶者に遺言者の遺産からなにがしかを取得する権利を認めているが、子は、経済的に自立していないときに限って遺言に優越する取得権を認められるのが通例である。
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