選択乗車と新幹線
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 14:27 UTC 版)
「大都市近郊区間 (JR)」の記事における「選択乗車と新幹線」の解説
乗車券は、原則として、利用者の実際乗車する経路どおりに発売される。すなわち、新幹線に乗車する場合は「新幹線経由」の乗車券を、在来線のみに乗車する場合は「在来線経由」の乗車券が発売される。しかしながら、幹在同一視の原則(旅規第16条の2)により、在来線経由の乗車券により並行する新幹線を利用でき、逆に、新幹線経由の乗車券により並行する在来線を利用できる。つまり、新幹線とそれに並行する在来線については、乗車券の券面記載経路(在来線経由または新幹線経由)にかかわらず、実際乗車した列車が在来線か新幹線かは区別しない。したがって、新幹線特急券とは別に乗車券を購入する際、それが在来線経由の乗車券であっても、当該新幹線に乗車できる。 ところが、大都市近郊区間の制度がかかわる場合はその限りでなく、本制度では一部の新幹線が「第16条の2の規定(幹在同一視の原則)にかかわらず」大都市近郊区間から除外されている。そのため、券面経路に並行する新幹線に乗車できるかどうか、乗車できる場合その前後の選択乗車は可能かどうかであるが、整理すると次のとおりとなる。 券面経路に並行する新幹線には乗車できる 選択乗車できる「他の経路」には、新幹線は含まれない 新幹線に乗車しない区間については、選択乗車が可能 券面に一部でも「新幹線経由」が含まれている場合は、本特例なしの通常の乗車券となる 「第16条の2の規定にかかわらず」という条文により幹在同一視の原則が適用されるはずの並行する在来線と新幹線において、前者が大都市近郊区間に属し後者が属さないという状態が認められている。ただ、「第16条の2の規定にかかわらず」という文言は、「同一の線路とみなさなくなる」という意味ではなく、あくまで大都市近郊区間に属する在来線に並行する新幹線区間を大都市近郊区間とするか否かについて幹在同一視の原則を持ち込まないという意味に過ぎない。現状では大都市近郊区間に属する在来線に並行する新幹線区間はほとんどが大都市近郊区間ではなく、それにより幹在並行区間を在来線経由とするか新幹線経由とするかで大都市近郊区間の特例を受ける場合と受けない場合の違いが発生する。その違いとは前述通り、有効期間・途中下車・選択乗車・区間変更の取扱いの違いであり、それら以外の違いは発生しない。要するに、在来線経由で大都市近郊区間の特例を受ける場合であっても新幹線経由で同特例を受けない場合であっても、有効期間・途中下車・選択乗車・区間変更といったものに該当しない幹在同一性については旅規第16条の2が適用されるため、どちらの乗車券であっても券面経路上の幹在並行区間については在来線・新幹線共に乗車可能となる。 大都市近郊区間の特例が付された乗車券は券面経路でない他の経路を選択乗車できるが、経路としての条件が「大都市近郊区間内」であるため、大都市近郊区間に含まれない新幹線を選択乗車することはできない。 「選択乗車区間」の解釈であるが、全券面経路に対して一部分でも経路を外れていればその全経路を1つの選択乗車区間と考えるのではなく、券面経路から外れている部分のみを個々の選択乗車区間とするのが正しい。よって、券面経路上の区間の乗車に関しては選択乗車の概念が及ぶところではないため、一度「他の経路」を経由している乗車券であっても券面経路に並行する新幹線には乗車でき、また新幹線に乗車した後の残りの区間を「他の経路」で選択乗車することも可能である。すなわち「新幹線に乗車しない区間については、選択乗車が可能」ということになる。 例:「黒磯駅(東北本線)小山駅(両毛線)新前橋駅(上越線)高崎駅」という経路の乗車券は、全線東京近郊区間内であるため大都市近郊区間の特例が付された乗車券である。「券面経路に並行する新幹線には乗車できる」ため、該当する区間である那須塩原駅 - 小山駅相互間の東北新幹線には乗車することができる。しかし「選択乗車できる「他の経路」には、新幹線は含まれない」ため、小山駅 - 高崎駅を東北新幹線小山駅 - 大宮駅間・上越新幹線大宮駅 - 高崎駅相互間を含む経路の選択乗車をすることはできない。また、「新幹線に乗車しない区間については、選択乗車が可能」であるため、仮に那須塩原駅 - 小山駅間で新幹線を利用した場合であっても、小山駅 - 高崎駅間を在来線大宮駅経由等で乗車することは可能である。 なお、「券面に一部でも『新幹線経由』が含まれている場合は、特例なしの通常の乗車券となる」ことについて、例えば、営業キロ100km超である全線大都市近郊区間在来線経由の乗車券では本特例が適用されるため途中下車ができないところ、上野駅 - 大宮駅間や、品川駅 - 小田原駅間といった新幹線と並行する区間をあえて新幹線経由にすれば大都市近郊区間内相互発着の条件を満たさないため本特例は適用されない。ゆえにその乗車券は途中下車が可能となり、幹在同一視の原則より新幹線経由部分を並行在来線に乗車することも可能である。すなわちこの乗車券は、旅客が全線在来線を乗車すると仮定した場合、その全線が大都市近郊区間内であるにもかかわらず途中下車が可能な乗車券となる。
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