通信傍受のための手続
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/01 00:47 UTC 版)
「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律」の記事における「通信傍受のための手続」の解説
通信傍受は、裁判官から発付される傍受令状に基づいて行われる。通信傍受という人権制約を伴う強制処分を実施する根拠・必要性があるかどうかについて、裁判官によってチェックされる仕組みをとっているのである(令状主義)。 捜査機関が通信傍受を行おうとする場合には、検察官または司法警察員が地方裁判所の裁判官に対して傍受令状を請求する(4条1項)。傍受令状の請求ができる検察官は検事総長からの指定を受けた指定検事に限られ、また、司法警察員についても、国家公安委員会等から指定を受けた警視以上の階級を有する警察官等に限定されている。つまり、他の令状よりも請求できる者がさらに限定されている。例えば逮捕状の場合(逮捕状については逮捕の項目を参照)、これを請求できる警察官の階級は「警部以上」とされている(刑事訴訟法199条2項)。 上記請求を受けて、裁判官は傍受令状を発付する(5条1項)。傍受令状を発付するための要件は通信傍受法3条に規定されている。その概要は以下である。 対象犯罪が犯されたと疑うに足りる十分な理由があり、対象犯罪が数人の共謀によるものであると疑うに足りる状況があること(3条1項1号) 対象犯罪の実行等に関連する事項を内容とする通信(犯罪関連通信)が行われると疑うに足る状況があること 通信傍受以外の方法によったのでは捜査が著しく困難であること 1に代わり、通信傍受法3条1項2号または3号に規定する状況がある場合にも傍受令状が発付される。また、「数人の共謀によるものであると疑うに足りる状況」がなくとも例外的に傍受令状が発付される場合も規定されている(3条2項)。 傍受令状に記載すべき事項は6条に列挙されている。さらに、令状を発付する裁判官によって、傍受の実施に際しての条件が付されることもある(5条2項)。 傍受令状は、「通信手段の傍受を実施する部分を管理する者」等に対して提示される(9条1項)。例えば、電話の傍受に際しては、電話会社の従業員に提示される。他の令状であれば、強制処分を受ける相手方に令状が提示される。例えば逮捕状は、逮捕という強制処分を受ける者(逮捕される者)に対して提示される(刑事訴訟法201条1項)。しかし通信傍受においては、強制処分を受ける相手方(通信傍受であれば傍受される通信を行う者がこれに該当する)に提示する必要はない。通信傍受の目的達成のためには、当然である。 また、傍受実施の際には、通信手段の管理者等を立ち会わせなければならない(12条)。
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