透過障壁と解毒
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/10 04:10 UTC 版)
生体が生体外物質から受けるストレスの主な特徴は、生体がさらされる化合物の種類が予測不能かつ長期的には多岐にわたるということである。生体外物質解毒システムが直面している最大の問題は、正常な代謝に関わる化学物質の複雑な混合物から、ほとんど無制限とも言える種類の生体外化合物を除去しなければならないことである。この問題に対して、生物は物理的障壁と特異性が低い酵素システムの見事な組み合わせを進化させた。全ての生命体は、内部環境への物質移動を制御するための疎水性浸透障壁として細胞膜を持っている。極性化合物は細胞膜を通り抜けて拡散することはできず、特異的に基質を選択する輸送タンパク質の仲介によって、有用な分子だけが混合物から細胞内に取り込まれる。つまりこの選択的取り込みのために、ほとんどの親水性分子は、輸送タンパク質に認識されず細胞内に入れない 。一方、これらの障壁を通過する疎水性化合物の細胞内への拡散は制御できないので、生命体は、細胞膜による障壁では脂溶性生体外物質を排除できない。しかし、浸透障壁があるので、生命体は膜透過性生体外物質に共通の疎水性を利用した異物代謝の機構を発達させることが可能である。生命体は、ほとんどあらゆる非極性化合物を代謝できるくらい、広範な基質特異性を獲得することで、選択性の問題を解決している。有益な代謝産物は極性で、一般に1つ以上の荷電した官能基を持つので排除される。正常な代謝から生じた反応性副生成物は、正常な細胞構造体の誘導体であり、通常その性質を引き継いで極性であるため、上述のシステムによって解毒されない。しかし、そのような化合物の種類は少ないので、特定の酵素により認識され排除される。反応性のメチルグリオキサールを除去するグリオキサラーゼシステムと活性酸素化学種を除去する様々な抗酸化システムがこの例として挙げられる。
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