軍事費の膨張
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 04:09 UTC 版)
アメリカのニューディール政策は、1929年からはじまる世界恐慌で、ピーク時で25%に達する失業率と1千万人を越える失業者が発生する中で、古典派経済学的な不況が自然に回復するという考え方で、フーバー政権による均衡財政の維持、高率関税による保護貿易政策によって深刻化した恐慌に対し、公共事業による景気刺激を図ろうとしたものであった。にもかかわらず結果的に第二次世界大戦参戦による「軍事支出の膨張」により経済の回復がもたらされ、当初の公共事業による景気刺激策の効果について疑問をもつ研究者も存在する。なお、軍事費の膨張は、ケインズの考えとは無関係な、政治家と軍人の政策によるものだった。 また、ケインズの政策を先取りして行われたとされる高橋是清蔵相(日本)やドイツのシャハト財務相によって行われた有効需要創出による景気刺激を目指した経済政策の成功が、その帰結として、軍事支出の拡大と軍部の強大化につながったとする主張もある。 「軍事費の著増が、(経済再建および社会投資目的の)本来のリフレーション政策の代役をやったことは、後日の大戦突入という日本の悲劇の発足点ともなった。というのはこのことが軍部をして、巨額の軍事費公債の発行がインフレ的物価騰貴とならず、むしろリフレーション効果を無限に発しうるがごとく錯覚させ、他日の無軌道な軍事公債発行に走らす重大因子となったからである」と、高橋亀吉は語っている。
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