負の誘電率と透磁率
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 09:49 UTC 版)
「メタマテリアル」の記事における「負の誘電率と透磁率」の解説
水や既存のガラスでは、誘電率および透磁率は正である。しかし、金や銀などの金属の中には可視光領域で負の誘電率をもつものがある。 屈折率(N)は誘電率(ε)と透磁率(μ)から N = ϵ μ {\displaystyle N={\sqrt {\epsilon }}{\sqrt {\mu }}} として計算される。誘電率と透磁率のどちらか一方のみが負の場合,屈折率は虚数となり,電磁波は物質に侵入しない。誘電率と透磁率の両方が正もしくは負の場合、屈折率は実数となり、電磁波は物質内に侵入する。前者の場合 N>0 となり、これは自然界に存在する結晶であり「右手系媒質」と呼べる。しかし、後者の場合 N<0 つまり負の屈折率を持ち、透明である物質は自然界には存在しないと考えられてきたが、人工的に作り出されたためにこの予測は覆された。 この現象については、次のような興味深い現象が起こるとされる。 スネルの法則は適用可能であるが、屈折は入射光と「同じ側」に起きる。 ドップラー効果は逆方向に発生する チェレンコフ放射は通常と異なる場所で起きる 群速度と位相速度が一致しない 高周波は長波長となり、短波長に変化しない。 ポインティングベクトルの向きが通常の物質と異なる。 現在までに、対象とする電磁波の波長より小さい繰り返し構造をもつように加工した特定の金属や金属化合物が試作され、マイクロ波や赤外線領域で性質を示すものが見つかっている。 具体的な構造例としては、理化学研究所による金属の微細周期構造(ナノ金属共振器アレイ)による表面プラズモンを利用したもの、豊田中央研究所と山口大学によるテフロン基盤上に銅と液晶のアレイを配置したミリ波向けのもの、パデュー大学による二酸化ケイ素・金・チタン薄膜をラミネートしてアレイとした赤外線向けのものなどがある。 これらの電磁波の挙動は、フレミングの左手の法則に従うため、負の屈折率をもつ物質を「左手系物質」や「左手系メタマテリアル」と呼ぶことがある。 ここで,左手の法則と言っているのは,均質媒質中における電場(E)、磁場(H)、波数(k)の向きを示す座標系のことである.つまり,従来の右手系において,kはE×Hの方向と等しい.これに対して左手系においては,kの方向はE×Hの方向と逆向きとなる.
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