負の温度について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/24 07:48 UTC 版)
熱力学では温度には下限があり、それを絶対零度と呼ぶが、統計力学では「絶対零度を下回る」温度として負温度が導入することがある。ただし、負温度は熱力学や平衡統計力学の意味での温度とは異なる概念である。熱力学で用いられる通常の温度は平衡状態の系を特徴づける物理量だが、負温度は反転分布の実現するような非平衡系や系のエネルギーに上限が存在するような特殊な系を特徴づける量である。負温度はある種の非平衡系に対してカノニカル分布を拡張した際に、この分布に対する逆温度の逆数(をボルツマン定数で割ったもの)として定義され、負の値をとる。すなわち、負の逆温度 β < 0 に対し負温度 T は β ¯ = 1 k T ¯ ( < 0 ) {\displaystyle {\overline {\beta }}={\frac {1}{k{\overline {T}}}}~~(<0)} という関係が成り立つように定められる。 この関係は通常の(正の)温度と逆温度の関係をそのまま非平衡系に対して適用したものとなっている。しかしながらその元となる逆温度と温度の対応関係は、統計力学で定義される諸々の熱力学ポテンシャルが熱力学で定義されたものと(漸近的に)一致するという要請から導かれるものであり、負温度が実現する系において同様の関係が成り立つと考える必然性はない。
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