語結合と文
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/24 17:16 UTC 版)
語結合は外見的には(2語以上から成る)文とよく似ている。ともにいくつかの単語が連なってできているからである。しかし、ロシア言語学では語結合と文は峻別される。語結合と文の違いは、語結合が名づけの単位であるのに対し、文が伝達の単位であるということに集約される。従って、語結合は文を構築する材料として文の中に入り込むことはあっても、それ自体は文ではない。 ロシア言語学において、文を文たらしめる要素は陳述性(предикативность)であるとし、陳述性は法・時制・人称などの文法範疇、およびイントネーションなどによって形作られるとしている(動詞の法・時制・人称の形は主語との照応によって作られるので、それら文法範疇は形態論的範疇であると同時に統語論的範疇でもあると見なされる)。このことから、述語動詞の法・時制・人称による語形変化は文のマーカーである陳述性の形であると見なされ、動詞の語形変化と照応関係にある主語も陳述性に関係する要素と見なされる。それゆえ主語と述語動詞の結びつきこそが文を形作るものであるとされている。例えば「Я живу в Москве.(私はモスクワに住む。)」という文において「я живу(私は住む)」は文の基礎であると考え、この文は「主部+述部」という文型に分類される。一方で「жить в Москве(モスクワに住む)」という単語の結びつきは文が形作られる以前に「жить(住む)」という動詞の特性によって予め決められた結びつきであるので、文というレベルの結びつきとは別個のものであると見なす。つまり、「я живу(私は住む)」という文は「主部+述部」という文型でありつつ、述部が「жить в Москве(モスクワに住む)」という語結合の構成となっている文とするのである(これが語結合を文の構築材料とするゆえんである)。 語結合は文のレベルにおける単語の結びつきでない(換言すれば語結合は陳述性と無縁である)という認識は、動詞結合において主軸構成素である動詞を「述語動詞」として捉えないことからも伺える。「жить в Москве(モスクワに住む)」は、主軸構成素が副動詞形になった副詞結合「живя в Москве(モスクワに住んで)」、形動詞形になった形容詞結合「живущий в Москве(モスクワに住んでいる~)」、名詞形になった名詞結合「жизнь в Москве(モスクワでの生活)」においても常に同一の語形を従属構成素として従えている。このことは「жить(住む)」と「в Москве(モスクワに)」が文のレベルで結びついているのではなく、「жить(住む)」という単語のレベルで結びついているからであるとする。
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