見栄えが悪く、売れ残る
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/28 04:48 UTC 版)
「サンデーサイレンス」の記事における「見栄えが悪く、売れ残る」の解説
幼少期のサンデーサイレンスは体格が貧相で、後脚の飛節が両後脚がくっつきそうなくらいに内側に湾曲しており、それはゲイリー・ジョーンズが「まるでコートハンガーみたいな形をしていた」というほど酷いものだった。ストーンファームの経営者アーサー・ハンコック3世は幼少期のサンデーサイレンスについて「脚がひょろ長くて、上体は華奢」であったと述べている。さらに、幼少期のサンデーサイレンスの馬体はくすんだ鼠色をしており、その容貌は、テッド・キーファーがストーンファームを訪れた際に必ず「あの真っ黒いケダモノをどこかへやってくれ。まったく、あんなひどい当歳(0歳)馬は見たことがないぞ」「あのウィッシングウェルの当歳は目にするのも不愉快だ」と言って毛嫌いするほど見栄えがしなかった。 ハンコックによると、それでも前より良くなっているといくら言ってもキーファーは聞く耳を持たなかったといい、ある時にはキーファーがサンデーサイレンスに対して辛らつな言葉を浴びせていると、ストーンファーム牧場長のピート・ローガンが「ケンタッキーダービー馬のような一流の競走馬にも様々なタイプがいるものだ」と口を挟み、「まあキーファーさん、世の中わかりませんよ。この馬だっていつかバラのレイが似合うようになるかもしれないじゃありませんか」と諭すと、キーファーは即座に「あのろくでなしにバラのレイが似合うのは、墓に入った後だけさ」と言い返したという。また気性が激しく、扱いの難しい馬であった。 サンデーサイレンスは1986年11月27日のサンクスギビング・デーの日にウイルス性の腸疾患にかかり、数日にわたってひどい下痢を起こして生死の境をさまよった。この時のサンデーサイレンスは液状の便が搾ったように出てくる日が何日も続き、何人かの牧場スタッフと敷地内に住居を構える獣医のカール・モリソンが付き添い、失われた水分を補給するため何リットルもの点滴をひっきりなしに行ったもののなかなか回復しなかった。その後回復の見込みが立たずに怒りを抑えられなくなって仕事を投げ出したモリソンからは見放されたものの、1日中23リットルもの点滴を続け、危機を脱した。 1987年にケンタッキー州で行われる世界的に有名なセリ市のキーンランド・ジュライセールに出品されたが、馬体の見栄えが悪かったサンデーサイレンスはセレクトセールへの出品が許可されず、一般部門に出品された。サンデーサイレンスには1万ドルの値がついたが、安すぎると感じたハンコックは1万7000ドルで買い戻した。ハンコックは、サンデーサイレンスを買い戻したことをトム・ティザムに報告し、買い取ってもらおうとしたが、ティザムは「所有する意思がない」と答えたため、そのままハンコックが所有することとなった。翌1988年3月、サンデーサイレンスはカリフォルニア州で行われたトレーニングセールに出品されたが、希望販売価格の5万ドルに届かず、3万2千ドルでふたたびハンコックに買い戻された。さらにハンコックは複数の競馬関係者に購入の打診をしたものの、ことごとく断られた。 ハンコックはサンデーサイレンスをキーンランド・ジュライセールで買い戻した後、友人のポール・サリバンと半分ずつの持ち分で共有した。その後サリバンは、カリフォルニア州のトレーニングセールで買い戻された時期に所有する競走馬の調教費と相殺する形で調教師のチャーリー・ウィッティンガムに持ち分を売却し、ウィッティンガムはそのうちの半分を友人の医師アーネスト・ゲイラードに売却した。 しかし、カリフォルニア州からケンタッキーに戻る帰り道の半ばで、サンデーサイレンスやその他のハンコックの所有馬を乗せた馬運車の運転手が突然心臓発作を起こし、車が大きく傾きながら路肩を外れて横転する事故に見舞われた。サンデーサイレンスは奇跡的に一命と競走能力を取り留めたものの、全身に無数の切り傷と打撲を負い、オクラホマ州の獣医病院に搬送されて2週間入院した。この事故で心臓発作を起こした運転手、馬運車に乗っていたサンデーサイレンス以外のハンコックの所有馬は全て死亡した。退院したサンデーサイレンスはしばらくまっすぐ歩けないような状態でストーンファームに戻り、数週間放牧に出されて競走馬としてデビューできるか様子見された。ハンコックによると、ストーンファームに戻ってきたサンデーサイレンスを見た獣医は「動揺病かと思ったくらいだった」というほど重症を覚悟したというが、特に症状は見られなかったため競走馬としてデビューできることになった。
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