複製と転写
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/06 12:49 UTC 版)
「一本鎖マイナス鎖RNAウイルス」の記事における「複製と転写」の解説
(−)ssRNAウイルスのゲノムの複製はRdRpによって行われ、RdRpはゲノムの3'末端のリーダー配列に結合して複製を開始する。その後、RdRpは(−)鎖のゲノムを鋳型として(+)鎖のアンチゲノムを合成する。アンチゲノムの複製の際には、RdRpはまずアンチゲノムの3'末端のトレーラー配列に結合する。その後、RdRpはアンチゲノム上の全ての転写シグナルを無視し、アンチゲノムを鋳型としてゲノムのコピーを合成する。複製はゲノムがヌクレオカプシド内にある際に行われ、複製の過程でRdRpはカプシドをほどいてゲノムに沿って移動する。RdRpによって新たなヌクレオチド配列が合成されると、カプシドタンパク質は組み立てられ、新たに複製されたウイルスRNAを包み込む。 ゲノムからのmRNAの転写は、アンチゲノムの産生と同じ方向に行われる。リーダー配列では、RdRpは5'末端の三リン酸RNAを合成し、ハプロウイルス亜門の場合は5'末端にキャップを付加し、ポリプロウイルス亜門の場合は宿主のmRNAからキャップスナッチングを行ってウイルスmRNAへ付加することで宿主細胞のリボソームが翻訳できる状態にする。 mRNAへのキャップ付加の後、RdRpは開始コドン部位の転写を開始し、終止コドンに到達すると転写を終結する。転写の終結地点では、RdRpはmRNAの3'末端に数百個のアデニンからなるポリアデニル化テール(ポリ(A)テール)を付加する。この過程はウラシル配列でのスタッタリング(英語版)によって行われている可能性がある。ポリ(A)テールが構築されると、mRNAはRdRpから放出される。複数の転写可能部位がコードされているゲノムでは、RdRpは次なる転写のために次の開始コドンのスキャニングを継続することができる。 一部の(−)ssRNAウイルスはアンビセンス(ambisense)であり、このことは(−)鎖のゲノムと(+)鎖のアンチゲノムがそれぞれ異なるタンパク質をコードしていることを意味している。アンビセンスウイルスの転写は、ゲノムからの直接的なmRNAの産生とアンチゲノムからのmRNAの形成の2回の転写が行われる。すべてのアンビセンスウイルスには、タンパク質をコードするmRNAが転写された後に転写を止めるためのヘアピンループ構造が含まれている。
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