複数政府による分裂
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 05:39 UTC 版)
2012年7月に国民議会選挙が実施され、内戦後のリビアを暫定的に率いてきたリビア国民評議会(NTC)は8月8日に新議会「制憲議会」(GNC、General National Congress)に権限を移譲し解散。2014年6月25日に行われた代議院(HoR、House of Representatives)選挙の結果、GNCで多数を占めていたイスラム勢力は影響力を失い、旧GNCを支持する勢力が台頭。8月4日にGNCからHoRへの権限委譲が行われたものの両者の対立は深まり、9月にGNCはオマル・アル=ハーシー(英語版)を首班とする「救国政府」の発足を宣言し、新たな国民議会(new GNC)を設置した。一方、国際的な信任を受けるHoRはアブドゥッラー・アッ=スィニー(英語版)を首相とし、ここにリビアは事実上の二重政府状態となった。 その後、両者はファイズ・サラージを首班とする統一政府「国民合意政府(英語版)」(GNA、Government of National Accord)を樹立することで合意し、2016年3月31日をもってGNCはサラージを議長とする大統領評議会(英語版)に権限を移譲するとした。4月5日にGNCは統一政府への権限委譲を承認したが、もう一方のHoRは統一政府を承認せず、スィニー首相率いる政府は依然として残った。8月にはHoRが統一政府側の内閣を否決し、統一政府は法的な正当性を持たない状態に陥った。 2016年10月14日、いったんは統一政府への権限委譲を決め表舞台から去っていたはずのGNCが、統一政府の最高諮問機関である国家評議会を占拠し、事実上のクーデターを起こす。GNCは再びハリーファ・アル=グワイル(英語版)を首班とする政府の発足を宣言し、ここにリビアは国際的な支持を受ける統一政府のサラージ政権、GNCのグワイル政権、そしてHoRのスィニー政権という3大勢力によって統治される状態となった。さらに同年12月1日には、かつてGNC政権の自称「首相」を務めたオマル・アル=ハーシー(英語版)が革命高等評議会の設立を宣言、新たに正当性を主張する政府がリビアに誕生した。 2021年2月にスイスのジュネーヴにて会合が開かれた国連主導のリビア政治対話フォーラム(英語版)において、12月の選挙まで暫定的に大統領評議会議長をムハンマド・アル=メンフィ、首相をアブドゥルハミード・ドベイバ(英語版)とすることで合意し、3月10日にトブルクのHoRがドベイバを首班とする暫定政権の閣僚人事を賛成多数で承認。トリポリの大統領評議会側も新政権への権限移譲に同意し、3月15日に暫定統一政権が発足した。 しかしドベイバは2021年末に予定されていた大統領選挙を実施できず、HoRはファトヒー・バーシュアガー(アラビア語版、英語版)元内務大臣を独自に新首相に選出。これに対しドベイバは選挙によってのみ政権移譲を認めると繰り返し主張し、辞任を拒否。3月1日はHoRがバーシュアガーを首相とする新内閣を承認し、リビアは再び二重政府状態に陥ったが、国際連合は暫定統一政権のドベイバを引き続き首相と認める立場をとっている。
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