衝突安全ボディーの構造
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/21 22:02 UTC 版)
「衝突安全ボディー」の記事における「衝突安全ボディーの構造」の解説
普通乗用車やバスの衝突安全ボディーの構造は、衝撃を吸収する「クラッシャブルゾーン」(フロント構造とリア構造)と、乗員の安全を確保する「セーフティゾーン(サバイバルゾーン)」(キャビン構造)に分けられており、これらの構造を組み合わせたモノコックまたはスケルトン構造である。これにより、衝突時に乗員に加わる衝撃を緩和する。また、エンジンブロックやトランスミッション、フロントホイールの素材や構造を工夫し、ボディーと一緒に押しつぶされることによって衝撃吸収力を高める技術の開発も進んでいる。 衝突事故のほとんどは、フロント片側をぶつけるオフセット(=ずれた)衝突である。これは、フロント全体で衝撃を受け止めるフルラップ(=全面)衝突より加わるエネルギーが集中し、ボディーの損傷波及が複雑になりやすい。オフセット衝突で問われるボディーの安全基準は、フロントが複雑につぶれていても、キャビンの生存空間が保たれ、乗員が無事でドアが開く、といった点である。世界的には59%オフセット衝突試験が行われているが、米国「IIHS」(米国高速道路安全保険協会)のスモールオーバーラップ前突(25%オフセット前突試験)では高度な設計が要求される。さらには歩行者頭部保護性能テストもあり、この対策として、ボンネットの高さと形状や素材が変化している。結果として、フロントとリアは衝撃をできるだけ吸収するための工夫された構造と素材、各パネルは複雑に複数が組み合わされた形になり、さらにインナーには充填材(Structural Foam/ストラクチュラルフォーム)が注入され、高張力鋼板の改良や新素材の採用も進んでいる。 一方、低速での事故でも人的被害が大きく、衝撃を吸収するスペースを確保しにくい側面衝突に対しては、車幅の拡大やドア断面を厚くすることで衝撃吸収のスペースを得て、ドアに内蔵しているサイドインパクトビームの強化・増設、ドアトリム内にエネルギー吸収パッドを設置、ロッカーパネル及びピラー(フロントピラー、センターピラー、クォーターピラー)の鋼板厚み増し、及びインナーパネルの追加、そしてサイドエアバッグ、などで安全性を確保している。これらは、ロールオーバー(=横転)事故への対応も含まれている。 衝撃吸収性能が向上した反面、エンジンオイルや燃料、冷却水の流出量が従来車と比較し大幅に増加するため、火災などの二次災害や環境汚染のリスクが大きく上昇するなど、デメリットも少なからず存在する。
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