肝臓における葉
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/23 00:05 UTC 版)
肝臓は基本的に左右両葉の肝葉(かんよう、lobi hepatis)に分けられるが、哺乳類では、腹縁に発達する1 - 2の葉間切痕(ようかんせっこん、interlobar notches、incisurae interlobares)により、これがさらに多数の肝葉に細分化される顕著な傾向がある。原則的には右葉(うよう、right lobe, right hepatic lobe、lobus hepatis dexter)および左葉(さよう、left lobe, left hepatic lobe、lobus hepatis sinister)にまず区別され、中心部は肝門を境界として両側の葉間切痕との間で、背位に尾状葉(びじょうよう、caudate lobe、lobus caudatus)、腹位に方形葉(ほうけいよう、quadrate lobe、lobus quadratus)を仕切る。多いものでは6葉を数える。 ヒトの肝臓は間膜により右葉、左葉、尾状葉、方形葉の4葉に区分されている。尾状葉はSpigel葉 (Spigelian lobe)、肝部下大静脈部 (paracaval portion)、尾状葉突起 (caudate process)の3領域に分類される。 ウシ亜目でも右葉、左葉、尾状葉、方形葉の4葉を持ち、肝臓は比較的小さく葉間切痕がない。ウシでは尾状葉がよく発達し、先端の尾状突起は右葉の外縁を超えて外に伸び、基部には乳頭突起があり肝門に向かってよく突出する。またウシでは左葉と方形葉は浅い臍静脈溝中にある肝円索基部の小彎で僅かに区別され、ヒツジ Ovis aries Linnaeus, 1758やヤギ Capra aegagrus hircus Linnaeus, 1758ではこの部分がウシよりも深く彎入する。右葉と方形葉は胆嚢を収納する胆嚢窩で区切られる。 ウマでは、肝円索より左側は左葉であるが、その中にも切痕が存在し、外側を外側左葉(がいそくさよう、left lateral hepatic lobe、lobus hepatis sinister lateralis)、内側を内側左葉(ないそくさよう、left medial hepatic lobe、lobus hepatis sinister medialis)に分ける。そのため肝臓は外側左葉、内側左葉、右葉、尾状葉、方形葉の5葉に分かれる。外側左葉は卵円状に長く、老個体では最大となるのに対し、若馬では右葉が最大の容積となる。右葉はやや四角形で、大結腸の圧迫により年齢とともに委縮する。方形葉の発達は悪い。 ブタやイヌ、ウサギ Oryctolagus cuniculus (Linnaeus, 1758)では左葉が外側左葉と内側左葉に分かれるだけでなく、右葉も外側右葉(がいそくうよう、right lateral hepatic lobe、lobus hepatis dexter lateralis)と内側右葉(ないそくうよう、right medial hepatic lobe、lobus hepatis dexter medialis)に分かれるため、外側左葉、内側左葉、外側右葉、内側右葉、尾状葉、方形葉の6葉に分かれる。ブタの肝臓は比較的大きく、特に外側左葉が最大となる。方形葉は三角形で発達が悪く、肝臓腹縁に届かない。尾状葉も小さい。ブタに比べ、イヌとウサギでは葉間切痕が深く発達するため、肝葉の存在が顕著である。イヌの肝臓は体格に比べ最も大きく、外側左葉が最も大きい。尾状葉の尾状突起および乳頭突起もともによく発達する。ウサギでも外側左葉が最大となり、それに次いで内側右葉も大きい。
※この「肝臓における葉」の解説は、「葉 (解剖学)」の解説の一部です。
「肝臓における葉」を含む「葉 (解剖学)」の記事については、「葉 (解剖学)」の概要を参照ください。
- 肝臓における葉のページへのリンク