老齢加算
生活保護において70歳以上の受給者に上乗せして支給される加算額。1960年代に設けられたが、2003年から制度の見直しが進められ、2006年までに全廃された。
老齢加算は、高齢者は他の世代よりも生活費が余計に必要であるという考えに立脚していた。加算額は地域によっても異なるが、おおむね月額1万5000円~1万8000円程度が上乗せして支給されていた。老齢加算を加えると基礎年金の満額支給を上回る場合もあったという。また、同一世帯に生活保護受給者に該当する70歳以上の高齢者が複数人いる場合、それぞれに対して老齢加算が支給される。
政府が老齢加算の廃止を決定・実施した後、全国9箇所で「老齢加算の廃止は憲法が保障する生存権の侵害にあたる」とし、行政の減額決定の取り消しを要求する訴訟が行われた。2010年6月に福岡高等裁判所の控訴審で原告が逆転勝訴した。他の8ヵ所では原告の訴えは退けられた。
2012年4月、最高裁判所は福岡高裁の判決を退け、審理を差し戻すよう命じた。
老齢加算
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 00:08 UTC 版)
老齢加算とは、70歳以上の高齢者が受給する生活保護費に対する加算である。1960年(昭和35年)の老齢福祉年金制度の発足と同時に設けられ、当初は月額1,000円であったが、その後年々増額され、2003年(平成15年)には1級地の場合、月額17,930円となっていた。 老齢加算は「老齢者は咀嚼力が弱いため、他の年齢層に比し消化吸収がよく良質な食品を必要とするとともに、肉体的条件から暖房費、被服費、保健衛生費等に特別な配慮を必要とし、また、近隣、知人、親戚等への訪問や墓参などの社会的費用が他の年齢層に比し余分に必要となる」 との名目で支払われていた。しかし「単身無職の一般低所得高齢者世帯の消費支出額について、70歳以上の者と60歳〜69歳の者との間で比較すると、前者の消費支出額の方が少ない」 と指摘され、2004年度から順次減額され、2006年度に廃止された。 老齢加算の廃止は生存権を保障した憲法に違反するとして、高齢者を原告とする訴訟が全国8都道府県で起こされた。一審・二審段階では合憲判決が相次いだが、唯一福岡高等裁判所だけが違憲判決を下し、原告が勝訴した。 しかし最高裁判所は、老齢加算について「厚生労働大臣の判断に誤りはなく、日本国憲法にも反しない」との立場を採り、福岡高裁の判決についても2012年4月2日に破棄、審理の差し戻しを求めた。
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