結晶_(イエスのアルバム)とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > 結晶_(イエスのアルバム)の意味・解説 

結晶 (イエスのアルバム)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/10/06 16:41 UTC 版)

『結晶』
イエススタジオ・アルバム
リリース
録音 1990年頃
ジャンル プログレッシブ・ロック
時間
レーベル アリスタ・レコード
プロデュース ジョナサン・エリアスジョン・アンダーソンスティーヴ・ハウマーク・マンシーナトレヴァー・ラビンビリー・シャーウッドエディ・オフォード
専門評論家によるレビュー
チャート最高順位
  • 7位(イギリス[1]
  • 15位(アメリカ[2]
  • 16位(スイス[3]
  • 17位(オランダ[4]
  • 18位(日本[5]
  • 32位(スウェーデン[6]
  • イエス アルバム 年表
    ビッグ・ジェネレイター
    (1987年)
    結晶
    (1991年)
    トーク
    (1994年)
    テンプレートを表示

    結晶』(けっしょう、Union)は、1991年4月30日に発売されたイエススタジオ・アルバム。1988年にイエスを脱退したジョン・アンダーソンが結成したアンダーソン・ブルーフォード・ウェイクマン・ハウ(ABWH)のメンバー4人と、イエスに残っていたメンバー4人が制作した。

    イエスの歴代メンバー8人が名を連ねるアルバムとして大きな話題を呼んだが、以下に述べる様々な事情により、8人が共同制作した作品とは言い難い。

    解説

    1990年、ABWHのアンダーソン、ビル・ブルーフォードリック・ウェイクマンスティ―ヴ・ハウは、『閃光』(1989年)に続くアルバム『Dialogue』(仮題)を制作していた。この時、俗称「90125イエス」[注釈 1]にアンダーソン脱退後も残っていたクリス・スクワイアトレヴァー・ラビントニー・ケイアラン・ホワイトがアンダーソンと和解した結果、ABWHと90125イエスは合体して8人編成のイエスになった[7][8][注釈 2]

    アリスタ・レコードは「8人イエス」のツアーに先立ち、宣伝の為にアルバムを急遽作成する必要に迫られ、プロデューサーにジョナサン・エリアスを起用。エリアスは制作途中だったABWHの楽曲を多くのゲスト・ミュージシャンを起用してなんとか仕上げ(後述)、90125イエスの楽曲を追加して本作を完成させた。収録曲14曲には8人が一緒に演奏している楽曲はなく、ABWHが8曲[注釈 3]、90125イエスが4曲[注釈 4]、ハウのソロが1曲、ブルーフォードとトニー・レヴィン[注釈 5]の即興演奏が1曲である。ジャケット・デザインはイエスのアート・ワークの多くを担当してきたロジャー・ディーンによる。

    メンバーには不本意なアルバムになり、アンダーソンは「これでは曲順が正しくない」、ウェイクマンは「このアルバムは"Union"ではなく"Onion"だな。だって聴くと涙が出てくるもの」[9][7]と不満をもらしている。

    本作はイギリスでチャート最高順位7位、アメリカで15位を記録し、商業的にはそれなりの成功を収めた。90125イエスの「リフト・ミー・アップ」[10]と「セイヴィング・マイ・ハート」[11]がシングル・カットされ、前者がビルボードホット・メインストリーム・ロック・チャートにて6週連続で1位を獲得した。ハウの「マスカレード」は第34回グラミー賞ベスト・ロックインストゥルメンタル・パフォーマンスにノミネートされた[12][13][注釈 6]

    本作はファンからも芳しい評価を得なかったが、発表後に行なわれた8人イエスのツアー[14][15]は大きな話題を呼んで大成功に終わった。

    制作の経緯

    アルバムのクレジットには当初、ゲスト・ミュージシャンの名前が記載されておらず、制作経緯は長らく謎に包まれていた。2001年に行われたプロデューサーのジョナサン・エリアスへのインタビュー[16][17]で、その大まかな経緯が明らかにされている。彼とメンバー[18][19]とでは認識が異なる可能性があるが、ABWHの状況を知る上で参照に値する証言として以下に要約する。

    ABWHのアルバム『Dialogue』は制作途中とされていたが、実際にはエリアスがプロデューサーに就任するまでに制作された素材は無く、メンバー同士の深刻な仲違いが起こっていた。特にアンダーソンとハウの関係は最悪で、ハウはエリアスにアンダーソンの歌詞の酷さやアイディアの無さを愚痴り、アンダーソンはハウが参加していたエイジアをこき下ろしていた。またウェイクマンはテレビ番組やソロ・アルバムにしか関心が無く、エリアスの用意したハモンドオルガンを「時代遅れだ」と吐き捨てるなど非協力的で、ブルーフォードに至ってはプロジェクトに対して金銭以外に全く興味を示していなかった。

    結局、メンバーを一同に集めて曲を制作させることもままならず、ハウがソロ・アルバム『タービュランス』のために用意していた幾つかの素材[注釈 7][8]と、アンダーソンが持っていた幾つかのアイデアを、エリアスが中心となって発展させるしかなかった。これがABWHの楽曲の殆どにエリアスが共作者として名を連ねている理由である。彼はハウの持ってきた2つばかりのリフをアンダーソンに発展させようとして、彼が「こんなのクズだ」と文句を言うのを「それでもこれがすべてだから、ベストを尽くすしかない」と言ってなだめるなど、相当な苦労を要した。

    結局、楽曲はアンダーソンとエリアスの共同プロデュースの形でスタジオ・ミュージシャンを呼んで演奏させるという方法で作成され、その過程でハウのパートはジミー・ホーン、ウェイクマンのパートはスティーヴ・ポーカロに置き換えられた。その理由としてエリアスは、アンダーソンの意向があったことはもちろんだが、ハウとウェイクマンのパートが互いのパートを全く聴かされずに録音されていたので使い物にならなかったことを挙げている。90125イエスのメンバーで唯一、スクワイアがABWHの数曲にコーラスで参加している。

    一方、90125イエスの楽曲は、アンダーソン不在で録音されたデモにアンダーソンのパートを重ねたものが収録された。完璧主義者のラビンは適切な形で録音し直すことを考えていたが、これらの完成度はそのまま発表されるに値するもので、エリアスはラビンの才能を称えている。本作に収録されなかった楽曲は、後に『イエスイヤーズ[注釈 8]ビリー・シャーウッドの別のプロジェクトに収録された。

    収録曲

    1. ウェイティッド・フォーエヴァー - "I Would Have Waited Forever"
    2. ショック・トゥ・ザ・システム - "Shock To The System"
    3. マスカレード - "Masquerade"
    4. リフト・ミー・アップ - "Lift Me Up" ※
    5. スタート・ザ・デイ - "Without Hope You Cannot Start the Day"
    6. セイヴィング・マイ・ハート - "Saving My Heart" ※
    7. ミラクル・オブ・ライフ - "Miracle Of Life" ※
    8. サイレント・トーキング - "Silent Talking"
    9. ザ・モア・ウィ・リヴ-レット・ゴー - "The More We Live-Let Go" ※
    10. アンコールワット - "Angkor Wat"
    11. デンジャラス - "Dangerous(Look In The Light Of What You're Searching For)"
    12. ホールディング・オン - "Holding On"
    13. イーヴンソング - "Evensong"
    14. ウォーター・トゥ・ザ・マウンテン - "Take The Water To The Mountain"
    15. ギヴ&テイク - "Give & Take" (ボーナス・トラック)

    ※印のついた4曲が90125イエスによる作品。15曲目は、日本盤および「Special European Release」に収録されているボーナス・トラック。

    参加ミュージシャン

    イエス・メンバー

    セッション・ミュージシャン

    • ジョナサン・エリアス - シンセサイザー、キーボード、ボーカル
    • トニー・レヴィン - ベース
    • ジミー・ホーン- ギター
    • ビリー・シャーウッド - ベース、ギター、キーボード、ボーカル
    • アラン・シュウォルツバーグ - パーカッション
    • ゲイリー・バーロー - シンセサイザー
    • ジェリー・ベネット - シンセサイザー、パーカッション
    • ジム・クリッチトン - シンセサイザー、キーボード
    • ゲイリー・ファルコーン - ボーカル
    • デボラ・アンダーソン[注釈 9] - ボーカル
    • イアン・ロイド - ボーカル
    • トミー・ファンダーバーク - ボーカル
    • シャーマン・フート - シンセサイザー
    • ブライアン・フォーレイカー - シンセサイザー
    • クリス・フォスディック - シンセサイザー
    • ローリー・カプラン - シンセサイザー
    • アレックス・ラザレンコ - シンセサイザー、キーボード
    • スティーヴ・ポーカロ - シンセサイザー
    • マイケル・シャーウッド[注釈 10] - ボーカル
    • ダニー・ヴォーン - ボーカル

    脚注

    注釈

    1. ^ 1983年に再結成されたイエスのアルバム『ロンリー・ハート』の原題”90125”に由来。
    2. ^ イエス」を名乗る権利は、結成時から一貫して在籍し続けるスクワイアが持っていた。
    3. ^ スクワイアが数曲にコーラスで参加。
    4. ^ アンダーソンがボーカルを担当。
    5. ^ ベーシストとしてアルバム『閃光』とツアーにゲスト参加した。
    6. ^ www.grammy.comでは、名義はイエスではなくハウになっている。
    7. ^ 「ウェイティッド・フォーエヴァー」には『タービュランス』の「センシティヴ・カオス」のフレーズが流用されている。『タービュランス』は本作の後に発表されたが1988年頃には概ね完成していた。
    8. ^ 「ラヴ・コンカーズ・オール」を収録。
    9. ^ ジョン・アンダーソンの娘。
    10. ^ ビリー・シャーウッドの兄。

    出典

    1. ^ ChartArchive - Yes
    2. ^ Yes | AllMusic - Awards - Billboard Albums
    3. ^ Yes - Union - hitparade.ch
    4. ^ dutchcharts.nl - Yes - Union
    5. ^ ORICON STYLE
    6. ^ swedishcharts.com - Yes - Union
    7. ^ a b Bruford (2013), p. 106.
    8. ^ a b Howe (2020), p. 180.
    9. ^ Wakeman (1995), p. 193.
    10. ^ Discogs”. 2024年8月30日閲覧。
    11. ^ Discogs”. 2024年8月30日閲覧。
    12. ^ Howe (2020), p. 182.
    13. ^ www.grammy.com”. 2024年8月30日閲覧。
    14. ^ Howe (2020), pp. 182–184.
    15. ^ Wakeman (1995), pp. 193–194.
    16. ^ Bondegezou Interviews - Jonathan Elias” (English). Yes News (2001年3月). 2011年9月17日閲覧。
    17. ^ ジョナサン・エライアス インタビュー” (2011年8月2日). 2011年9月17日閲覧。
    18. ^ Bruford (2013), pp. 106, 122.
    19. ^ Howe (2020), pp. 180–182.

    引用文献


    「結晶 (イエスのアルバム)」の例文・使い方・用例・文例

    Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


    英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
    英語⇒日本語日本語⇒英語
      

    辞書ショートカット

    すべての辞書の索引

    「結晶_(イエスのアルバム)」の関連用語

    結晶_(イエスのアルバム)のお隣キーワード
    検索ランキング

       

    英語⇒日本語
    日本語⇒英語
       



    結晶_(イエスのアルバム)のページの著作権
    Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

       
    ウィキペディアウィキペディア
    All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
    この記事は、ウィキペディアの結晶 (イエスのアルバム) (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
    Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
     Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
    この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
    浜島書店 Catch a Wave
    Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
    株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
    Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
    研究社研究社
    Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
    日本語WordNet日本語WordNet
    日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
    WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
    日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
    Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
    「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
    EDRDGEDRDG
    This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

    ©2025 GRAS Group, Inc.RSS