結晶の表面
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/18 05:02 UTC 版)
全く同じ物質の表面でも、結晶を切断する面の方向によってその性質は異なる。結晶面はミラー指数によって指定される。例えばSiの単結晶を、ミラー指数が(111)となる格子面に沿って切断した切断面はSi(111)面と呼ばれる。同じSi結晶の表面でも(100)面と(111)面のように、方向が異なれば異なる表面として扱う。固体には並進対称性があるため、整数 k、l、mと単位格子ベクトルa、b、cを用いて、任意の格子点は ka + lb + mcと記述できる。このうちc軸方向を法線とした表面上の格子点は、ka + lbと表せる。すなわち、c軸に垂直な表面はaとbが張る四角形を単位胞とする2次元格子からなる。 バルクの断面と同じ構造の表面を理想表面という。Si(100)面とSi(001)面は方向が異なるが、立方晶であるバルクの対称性がそのまま保たれるとすれば、どちらの断面も等価である。等価な結晶面の集合は、ミラー指数を中括弧で囲んで{100}のように示す。実際の表面が2次元の結晶となっていることは、低速電子線回折 (LEED)、走査型トンネル顕微鏡 (STM)、原子間力顕微鏡 (AFM) などにより確認できる。 理想表面と実際の表面で完全に構造が一致することはまれで、多くの表面では電荷密度の偏りやダングリングボンドに起因する不安定性を緩和するために、原子が理想表面での位置からずれる。このような構造の変化を表面再構成(または再配列)と呼ぶ。表面に吸着した原子や分子が原因で表面再構成が起こることもある。 実際の表面の単位格子ベクトルは、理想表面の単位格子ベクトルの線型結合で表現する。このときの係数を指定すれば、再構成の有無にかかわらず表面の対称性を表現できる。実際には(2×2の行列となる)係数そのものよりも、簡略化したウッドの記法に基づいて「Si(111)-(7×7)」のように表面の対称性を表すことが多い。
※この「結晶の表面」の解説は、「表面科学」の解説の一部です。
「結晶の表面」を含む「表面科学」の記事については、「表面科学」の概要を参照ください。
- 結晶の表面のページへのリンク