組織分布と分泌
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 21:10 UTC 版)
研究によると、リーリンはシナプス小胞には存在せず、分泌経路を通って分泌され、ゴルジ体に蓄えられることが分かっている。リーリンの放出速度は脱分極の影響を受けないが、その生成速度に厳密に依存する。これは、他の細胞外マトリックスタンパク質の分泌の過程と類似している。 脳の発達の期間は、リーリンはいわゆるカハール・レチウス細胞、カハール細胞、レチウス細胞によって大脳皮質と海馬で分泌される。リーリンの発現する胎児や新生児の脳の細胞では、皮質の境界領域や軟膜下果粒層、海馬の網状分子層や歯状回の上部境界領域で多く見られる。 発達中の小脳では、リーリンは顆粒状細胞が顆粒状細胞層の内側に移動する前に、顆粒状細胞層外側で発現する。 リーリンの合成は誕生直後にピークを迎え、その発現量は急激に減少し、発現部位も分散する。成体の脳では、皮質のγ-アミノ酪酸作動性介在神経細胞や小脳のグルタミン酸作動性神経細胞、また少量であるがカハール・レチウス細胞で発現する。GABA作動性介在神経細胞やマルティノッティ細胞では、リーリンはカルレチニンやカルビンディンより遥かに多い量が検出されるが、シャンデリア細胞や籠細胞等のパルブアルブミン発現細胞ではそれほどではない。白質では、介在神経細胞のリーリン発現の割合はごく小さい。脳の外では、成熟した哺乳類の血液、肝臓、下垂体中葉、副腎のクロム親和性細胞等で見られる。肝臓では、リーリンは伊東細胞に局在している。肝臓が損傷を受けるとリーリンの発現量が増え、回復すると発現量は元に戻る。 目では、リーリンは網膜神経節細胞から分泌され、角膜内皮でも見られる。肝臓と同じように、損傷を受けると発現量が増える。また、歯牙形成の際や永久歯の中で、歯髄の最外層にある象牙芽細胞でも生産される。象牙芽細胞は、痛みの信号を神経末端に変換するセンサー細胞の役割も果たすという研究成果もある。この仮説によると、リーリンは象牙芽細胞と神経末端の接触を促すことで、この過程に関わっている。
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