細胞機構
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 22:53 UTC 版)
RNAiは、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)によって制御されるRNA依存的遺伝子サイレンシング過程であり、細胞質に存在する短い二本鎖RNA(dsRNA)分子によって開始される。dsRNAが外因性のもの(RNAゲノムを持つウイルスの感染や実験室的操作に由来するもの)である場合には、RNAは直接細胞質に取り込まれ、Dicerによって短い断片へと切断される。ゲノム中のRNAコーディング遺伝子から発現したpre-miRNAなどのように、RNAi経路を開始するdsRNAは内因性のもの(細胞に由来するもの)である場合もある。こうした遺伝子に由来する一次転写産物は、まず核内でpre-miRNAに特徴的なステムループ構造を形成するようプロセシングされる。その後、外因性と内因性の2つのdsRNA経路はRISCへと集約される。 外因性のdsRNAはリボヌクレアーゼタンパク質であるDicerによってRNAiを開始する。Dicerは植物ではdsRNA、ヒトではshRNAと結合して切断を行い、3'末端に2ヌクレオチドの突出部を持つ20–25塩基対の二本鎖断片を形成する。この長さは、標的遺伝子に対する特異性を最大化し、かつ非特異的な効果を最小化することが複数の生物種のゲノムに対するバイオインフォマティクス研究から示唆されている。こうした短い二本鎖断片はsiRNAと呼ばれる。その後、RISCローディング複合体(RLC)によって、siRNAは一本鎖へと分離されて活性型のRISCへ取り込まれる。ショウジョウバエのRLCはDcr-2(Dicer2)とR2D2を含み、Ago2とRISCの一体化のために重要である。TAF11(英語版)はDcr-2とR2D2の四量体化を促進してRLCを組み立て、siRNAに対する結合親和性を10倍増加させる。TAF11との結合によって、R2D2/Dcr2-initiator(RDI)複合体はRLCへと変換される。R2D2にはタンデムに並んだdsRNA結合ドメインが存在し、siRNA二本鎖の熱力学的に安定な末端を認識する。一方、Dcr-2は熱力学的安定性の低い末端を認識する。RISCへのRNAのローディングは非対称的であり、Ago2のMIDドメインはsiRNAの熱力学的に不安定な末端を認識する。そのため、5'末端がMIDドメインに認識されなかったパッセンジャー鎖は放出され、もう一方のガイド鎖はAgoと協調的にRISCを形成する。 RISCへと取り込まれた後、siRNAは標的mRNAと塩基対を形成して切断を行い、そのmRNAが翻訳の鋳型として利用されることを防ぐ。siRNAとは異なり、miRNAがロードされたRISCはmRNA上の相補性領域を探してスキャンする。 miRNAは通常不完全な相補性でmRNAの3' UTR領域に結合し、リボソームが翻訳のためにアクセスすることを防ぐ役割を果たす。
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