紫上の父親の官職表記
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/06/05 02:24 UTC 版)
「東久邇宮家旧蔵本源氏物語」の記事における「紫上の父親の官職表記」の解説
紫上の父親である宮について、同人が兵部卿宮から式部卿宮になるのは少女巻(光源氏33歳)であり、実際例えばそれ以前の「澪標」巻(光源氏28歳から29歳)や「絵合」巻(光源氏31歳)では「兵部卿宮」となっているのであるが、それよりさらに前の蓬生巻(光源氏28歳)でも当然「兵部卿宮」となっていないとおかしいところであるが、ここでは青表紙本をはじめとするほとんどの写本で「式部卿宮」と表記されており、古くからこれを「不審である」とされてきており、古くから知られている写本では肖柏本のみが「兵部卿宮」となっており、御物本・池田本・三条西家本は「式」に「兵」を併記している。このような本文状況を元に玉上琢弥はあくまで「式部卿宮」が原型であって、「兵部卿宮」となっているものは改変した形態であろうとした。また、「このような現象が生じたのは巻序・年立の上では少女巻より前になる蓬生巻が巻序・年立とは逆に少女巻より後に成立したためである」として玉鬘系後記挿入説の根拠の一つに挙げる見解も存在するが、玉上琢弥は「仮に蓬生巻が後補の巻だとしても、そのような巻を書き加えるに当たって登場人物の官職や呼称の変遷に注意を払わず矛盾することになるような巻を書き加えるようなことをするだろうか」と疑問を示している。このような状況の中で、本「東久邇宮家旧蔵本源氏物語」や本写本と同様に近年になって初めて学術的調査が行われた大正大学本のようなこの部分が「兵部卿宮」となっており矛盾が存在しない写本がいくつか発見されており、浜口俊裕はこの部分を「兵部卿宮」としている本写本のような本文を、「従来の疑問が氷解する適正な本文である」としている。但しこのような他の巻の記述との整合性を調べる方法による本文の質の判断については、阿部秋生は多くの写本で複雑な異なりの様相を見せる夕霧巻の巻末に記されている夕霧の子供の順序や母親の異なりについて、他の巻の記述との整合性の有無を元に本文の質の良し悪しを論じることの問題を指摘している。
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