第6世代-スレット&エラーマネジメント
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/12 04:22 UTC 版)
「クルー・リソース・マネジメント」の記事における「第6世代-スレット&エラーマネジメント」の解説
1990年代後半になると、CRM訓練プログラムが実際に機能しているか、そして、安全性向上に貢献しているかが議論されるようになった。 実際の運航におけるCRMの実践内容やCRMの有効性、エラーの実態などを明らかにするため、ライン運航安全監査 (Line Operation Safety Audit; LOSA) と呼ばれる調査が実施されるようになった。LOSAは、専門の訓練を受けたオブザーバーがコックピットに同乗し、乗務員の行動や運航状況を観察・記録した上で、そこから得られるデータに基づいて問題解決の対策を立案する手法である。LOSAは、テキサス大学のロバート・ヘルムライクを中心としたヒューマンファクター研究プロジェクトにより開発された。初期のLOSAはCRM訓練の有効性と実効性に焦点をあてていたものの、調査が進むと、運航乗務員はエラーマネジメントだけではなく、(1) エラーを起こす誘因に対処し、(2) 生じたエラーが安全に影響を及ぼす前に修正処置を取り、(3) さらに悪い結果に至る前に危険な状態から回復する行動を取っていることが確認された。 LOSAの分析により、エラーだけではなく、潜在的な危険要因(スレット)の存在とその重要性が明らかとなった。FAAによる定義では、スレットとは乗員以外の人や環境などに由来する事象やエラーのことであり、例えば、悪天候や機材故障、管制との不適切なコミュニケーション、乗員の疲労などが挙げられる。 これらに対処するため、ヘルムライクの研究グループは、第5世代の「エラーマネジメントのためのCRM」をさらに発展させ、第6世代のCRMを「スレットとエラーへの対処策」(Threat and Error Management; TEM) と位置付けた。そして、CRMの実践を Error Avoidance (エラーの回避) Threat Management(存在する脅威への対処) Error Management(発生したエラーへの対処) Undesired Aircraft State Management(航空機の望ましくない状態への対処) と定義した。 2006年には国際民間航空機関 (ICAO) の付属書が改定され、乗員のライセンスの要件に加えられた。さらに、2011年には整備部門にも適用され、乗務員以外の職種でもTEMは業務上の要件となっている。 CRMは、このように時代とともに変遷を遂げながら、航空機の運航において発生するヒューマンエラーの影響を最小限にするツールとして位置付けられ、運航に必要な知識・技能と同様に重要なものであると認識されるようになった。
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