第5楽章 フィナーレ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/18 02:46 UTC 版)
「交響曲第10番 (マーラー)」の記事における「第5楽章 フィナーレ」の解説
Langsam, schwer(ゆっくりと、重く)ニ短調 - 嬰ヘ長調 3/4拍子 - 4/4拍子 - 2/2拍子 第4楽章から休みなくつづき、緩-急-緩という、大きく三つの部分からなっている。これを序奏・ソナタ主部・コーダとする見方もできるが、「主部」の部分が前後と比較して短く、十分な発展がないうちに結尾に至るため、一般的なソナタ形式とはいえない。 バスドラムの連打とチューバによる不気味な響きではじまる。第3楽章の三音動機がこれに加わり、付点リズム・順次下降の動機も姿を見せる。フルートが印象的な旋律(譜例11)を奏で、次第に高く昇っていく。全曲の白眉ともいえる美しい場面で、主題の後半には付点リズム・順次下降の動機が示される。この主題は弦に受け継がれるが、高揚したところで再びバスドラムが強打され、冒頭部分が再帰する。 譜例11 アレグロ・モデラートにテンポを速め、三音動機と付点リズム・順次下降の動機が現れて両者が争うように展開される。いったんテンポが落ちて、フルートの主題が出るが、再び速くなり、ここで第1楽章の不協和音が再帰し、三音動機も荒々しく付加される。ホルンと弦に第1楽章のA主題が大きく現れ、音楽は次第に静まっていく。 ハープの分散和音に乗って、フルート主題をヴァイオリンが再現し、フルートも加わる。三音動機が柔らかく出ると、音楽は感動的に高まり、やがて静かになっていく。最後は嬰ヘ長調となり、名残惜しそうな響きのなかを、付点リズム・順次下降の動機がくっきりと示され、余韻のような交響曲第9番の二度下降動機(ただしここではミ-レでなくレ-ドと主音に至る)によって終わる(譜例12)。マーラーはこの結尾部分に、「君のために生き! 君のために死ぬ! アルムシ(アルマの愛称)!」と書き込んでいる。 譜例12 なお、このコーダ部分には嬰ヘ長調と変ロ長調の2種類のスケッチがあり、クック版を含め、ほとんどの補筆完成版は嬰ヘ長調を採用して、第1楽章と照応させている。
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