第一話 無明逆流れ
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「腕 -駿河城御前試合-」の記事における「第一話 無明逆流れ」の解説
寛永6年(1629年)9月24日、駿河城内。城主・徳川忠長の御前で、因縁の2人が真剣試合により雌雄を決するべく、対峙していた。盲目の剣士・伊良子清玄、隻腕の剣士・藤木源之助。岩本道場の双竜と謳われた2人が対決するに至った因縁は、6年前に遡る。 岩本道場の主・岩本虎眼は弟子である伊良子清玄と藤木源之助のいずれかを己の娘・三重と娶わせて跡取りとすることを考えていた。しかし、愛妾のいくが伊良子と密通していることに勘付いた虎眼は、魔剣・流れ星により伊良子の両目を斬り、いくと共に屋敷から放逐する。しかし、心の中で伊良子を夫と思い定めていた三重は、伊良子を斬った者の妻になると言い張り、藤木との婚儀を拒否した。 3年後、岩本道場の門前にいくに付き添われた伊良子が現れ、虎眼との立ち会いを望む。横一文字に切り裂く流れ星を破るため伊良子が編み出した、剣先を足指で挟み下方から跳ね上げる「無明逆流れ」の秘法は、剣の道に入った者に無意識に反応して斬るまでに研ぎ澄まされていた。剣鬼となった伊良子は、無明逆流れの太刀により一刀のもとに虎眼を斬り捨てた。師の仇討ちのため、三重のため、伊良子に挑む藤木。しかし、盲目となり女人に惑うことの無くなった伊良子と、三重との関係に心を乱す藤木、2人の対決は藤木の左腕を切断した伊良子の勝利に終わった。 藤木は一命を取り留めたが、彼の敗北により道場は廃れ、屋敷には藤木と三重の2人が残るのみとなった。三重の体を求める藤木に対し、三重は何としても伊良子を斬るよう望み、斬った時こそ藤木の妻になると約した。伊良子の無明逆流れを破るため、藤木は山に籠った。3年後、下山した藤木もまた剣鬼と化していた。藤木と三重は駿河に赴き、忠長に召抱えられた伊良子との試合を求め、御前試合の第一陣に据えられることとなった。 2人の剣鬼と、それを見守る2人の女人・三重といく。藤木は手にした太刀を投げ、伊良子は無明逆流れの太刀を跳ね上げ、それを打ち落とす。脇差を抜き伊良子に迫る藤木。しかし、伊良子は藤木が剣の間合いに入る前に跳ね上げた刀を振り下ろした。その隙に肉薄した藤木は、脇差を受け止めた伊良子の剣をへし折り、そのまま斬り伏せた。伊良子は剣の道に入ってきた1匹の虫に反応し、無意識に斬り返してしまったのだ。敗れた伊良子は、微笑を残し、その場に崩れ落ちる。結末を見届けた三重といくもまた、己の喉を突き命を絶った。後には勝者である藤木がただ1人残された。 登場人物 伊良子 清玄(いらこ せいげん) 岩本道場の双竜と呼ばれた剣士の1人。御前試合の6年前の時点で20歳。涼やかな顔立ちの若者で、その瞳で多くの女人を惑わす。その天賦の才を藤木や虎眼は認めていたが、稽古もそこそこに女遊びに耽ることが多く、他の門弟達からは嫌われていた。虎眼の愛妾いくとも密通しており、それが原因で虎眼に両目を斬られ失明する。失明した後、虎眼の流れ星を破るため、無明逆流れの秘剣を編み出す。 藤木 源之助(ふじき げんのすけ) 岩本道場の双竜と呼ばれた剣士の1人。御前試合の6年前の時点で20歳。実直な男で、他の門弟達からの信望も厚い。剣の才では、己よりも伊良子の方が上と感じている。 岩本 虎眼(いわもと こがん) 岩本道場の道場主。「鬼眼」と恐れられる強烈な眼力により、対峙した相手を射竦める。流星の走るごとく、横に薙ぎ払う一刀必殺の魔剣「流れ星」を得意とする。 三重(みえ) 岩本虎眼の娘。御前試合の6年前の時点で16歳。伊良子に想いを抱く。 いく 岩本虎眼の愛妾。門弟の伊良子と関係を持ち、屋敷から放逐された後も、伊良子に献身的に寄り添う。 原作との相違点 牛股権左衛門が登場しない。 伊良子清玄は足を負傷していない。 御前試合で、伊良子は剣の道に入ってきた1匹の虫に無意識に反応して無駄な切り返しをしてしまい、それ故に藤木に敗れている。
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