科学観測機器
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/24 03:21 UTC 版)
NICERの主要科学観測機器はXTI(X-ray Timing Instrument)と呼ばれている、56個のX線検出器を並べた検出器である。この検出器は、集めたX線光子のエネルギーと検出器に到達した時間を高精度に記録する。GPS受信機が搭載されているので、X線の到達時刻と到達したときの検出器の位置を正確に記録することができ、時刻の計測誤差は300ナノ秒を下回る精度である。この検出器は中性子星からの熱放射に最も特化した、1.5keVのX線を最も高感度に検出するようになっている。 パルサーと呼ばれる中性子星の中には数ミリ秒ごとにパルスのようにX線を発するが、NICERは高感度でかつ時間分解能が優れているため、パルス1つの波形を正確に測定することができる。現代の理論では中性子星の半径と質量によってこの波形が決定されるとされており、NICERの観測により中性子星の大きさと質量が決定できる。特に質量を決定することは容易なのに対し半径の決定は非常に難しく、この観測によってはじめて高精度に決定される。また半径と質量の比率が決まると密度が決定されるため中性子星内部の状態方程式を記述することができるが、原子核内部よりも高密度とされている中性子星内部の状態を記述できれば、極限まで高密度な物質の状態についての解明につながる。 ISSに載って軌道を周回する間にNICERは2つから4つのターゲットを観測する。90分で地球を周回するためNICERから見た天体の位置は高速で変化するが、NICERに搭載されたスタートラッカーとNICERの向く方向を制御する回転台によってずっと同じ天体を観測することができる。NICERの科学目標を達成するために、1年半をかけて1500万秒の露光時間をかけて観測を行う。 NICERに搭載されたX線レンズアレイ NICERの構造図 この他、ISSに搭載された日本が開発した全天X線監視装置(MAXI)と協力体制をとることで、MAXIが監視中に発見したX線の突発現象についてすぐにNICERが高精度観測を行うという連携も実現している。
※この「科学観測機器」の解説は、「NICER」の解説の一部です。
「科学観測機器」を含む「NICER」の記事については、「NICER」の概要を参照ください。
- 科学観測機器のページへのリンク