神話との相違点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/27 08:45 UTC 版)
作品のストーリー展開が伝承と違う事について、『文藝春秋』誌上で塩野七生がこの映画を酷評する評論を書いている。指摘の内容は、以下の3点である。 不義を嫌っているはずのアキレスがオデュッセウスの策謀に協力しトロイの木馬に乗ってトロイを攻め落とした事。 アキレスが弱点のかかと以外にも矢を受けて死ぬ事。 脚色について。 また、『イリアス』は、ヘクトルの死で終わっているので、その後の「トロイの木馬」などの陥落のエピソードはその他のトロイ戦争の伝承によっている。これらの伝承と大きく違うのは、以下の2点である。 アキレスとブリセイスの悲恋が中心に描かれており、アキレスはトロイが陥落時に戦死する。 神々が一切登場せず、人間世界の視点で話が進む。 他にも、メネラオスが中盤でヘクトルの不意打ちによって死んでしまう点や、アガメムノンがブリセイスに刺殺される点、パリスが死なず、ヘレン、アンドロマケとともに逃亡している点、ブリセイスとヘクトルは従兄弟という設定になっている点などが挙げられる。 そもそも、映画自体が神話を元にせず人間ドラマの観点から制作されているため、『イリアス』で神々が関与する場面は、何らかの形で人間によるフォローが入れてある。事実、「神々」といっても、はっきり名前が登場するのはアポロンとポセイドンくらいで、ポセイドンはたった一度名前が出されるだけである。 後半のヒロイン的存在ブリセイスは、『イリアス』では「神官の娘で、アポロンに仕えている少女」程度の扱いであったが、本作ではアキレスが心を開き、深く愛する女性として描かれている。アキレスはトロイア陥落直後真っ先に、メネラオスやヘレンではなく、彼女を救うため戦場を奔走する。 メネラオスとパリスの死闘で追い詰められたパリスは、『イリアス』ではアフロディテによって助けられるが、映画では兄ヘクトルの足にすがりつき、助けを求め、ヘクトルがメネラオスを殺している。 アキレスへの神の庇護は直接描写はされず、アキレス自身や彼の母親の台詞の中で仄めかされるのみとなっている。作中あくまで普通の人間として扱われているため、神話ではパリスに弱点のかかとを射られて即死してしまうが、本作ではかかとを射られた後に胸に矢を受けて死ぬこととなった。
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