神経棘の機能
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 21:14 UTC 版)
スピノサウルスの帆あるいはコブの用途は定かではない。研究者の提唱する仮説には、体温調節やディスプレイならびに威嚇に用いられたとする説がある。 この構造に大量の血管が張り巡らされていたならば、スピノサウルスは帆の広い面積を利用して熱を得られたと考えられる。これは、スピノサウルスの恒温性が高くなく、また夜間に気温が低く、日照時間の短くない環境に生息していたことを暗示する。また、この構造からの放熱も可能だった。大型動物は体の表面積に対して体積が大きいため、気温が高い場合はいかにして体温を逃がすかという問題に直面する。帆は体積の増加を最小限に抑えながら肌の表面積を拡張したほか、太陽光線と平行に向けるか風向きと直角に向けることにより極めて効率的な冷却が可能だった。しかし、Bailey (1997) では帆は放熱する以上に吸熱する可能性があるとの見解が述べられている。彼はスピノサウルスおよび他の恐竜が神経棘に脂肪の塊を有し、エネルギーを背中に蓄え、また熱を遮蔽していたと提唱した。 現代の動物の精巧な体の構造の多くは、交尾の際に異性を惹きつけるためのものである。スピノサウルスの帆は、クジャクの尾のように求愛のために使われていた可能性がある。シュトローマーは、神経棘の大きさが雌雄で異なっていたのではないかと推測している。水棲説を提唱したイブラヒムも、帆は水面下から見えない一方で水面より上に目を持つ動物からは目立ったはずであると考え、交尾相手への誘いや対立する個体への警告などの用途を推測している。 Gimsa et al.(2015) では、スピノサウルスの背中の帆はカジキの背鰭のように流体力学的機能を果たしたと提唱された。Gimsaらは、より基盤的で後肢の長いスピノサウルス科の帆が丸みを帯びているか三日月形である一方、スピノサウルスの神経棘がバショウカジキなどの背鰭に似たやや長方形に近い形状をなしていると指摘した。彼らはスピノサウルスがバショウカジキなどと同様の方法で帆を用い、長い細い尾は現生の オナガザメのように獲物を打ち付けるような役割を担ったと主張した。
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