社会成層
社会的成層
社会成層
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/18 13:40 UTC 版)
『ゴリオ爺さん』の主要テーマの一つに、社会成層(ある社会の構成員の中で、各自が持つ権力や富の差によってできた社会的地位の分化)を知り、そこを上昇していくことの追求がある。ルイ18世が裁可した1814年憲章によってできた「法治国家」は、フランス国民のうち最も富を持ったごく一握りの集団にしか選挙権を認めていなかった。そんな状況の下でラスティニャックが抱いた社会的地位を得たいという意志は、彼の個人的な野心というだけではなく、自らも政体に参加したいという意志のあらわれだった。スコットの小説の登場人物と同様、ラスティニャックは、その言葉も行動も、彼の生きていた時代の時代精神である。 バルザックは登場人物の言動と彼自身の語りによって、当時の社会の中にある社会ダーウィニズム的思想を赤裸々に描いている。ボーセアン子爵夫人はラスティニャックにあけすけに言う: 冷徹に計算すればするだけ、あなたは出世できるわ。無慈悲に殴れば、周囲からは怖がられることでしょう。あなたにとって馬車馬程度の価値しかない人間なら、相手がへばらないうちにとっとと乗り換え、用がなくなれば道に置き去りにしなさい。そうでなければ、望みなんてかなえられないの。そして、いいこと?あなたは女性に好かれなければ何にもなれない、それも若くて財産がある、世俗の女性に。でも、もしあなたの方が好きになってしまったら、それは大事に鍵をかけてしまって、誰にもわからないようにすることね。さもないと終わりだわ、あなたは死刑執行人の座を滑り落ちて、死刑囚になってしまうでしょう。万が一愛するようなことがあるなら、決して秘密はもらさないことね。 この姿勢はヴォートランには一層はっきりと見られる。彼はラスティニャックに言う、「今の君には説明もつかないくらいの大成功を収めたかったら、決してばれないように犯罪を行うことだ。ばれないという事は、完全にうまくいったということだからな」。この言葉はしばしばこう言い換えられてきた、「大成功の影には、大犯罪が付き物」。
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