研究者の評価
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/03 06:13 UTC 版)
三井報恩会は、一方で財閥批判の鎮静化が目的であり、他方で石炭液化研究や人造繊維研究の資金助成は三井系企業で事業化するという私的利益のためであるから、偽装であるという否定的評価や、搾取一点張りから転じたのは画期的だとの肯定的評価もある。三井一族の退陣は、外観を変えただけという否定的評価や、所有と経営を分離して専門経営者へのシフトを促進して経営を強化したという肯定的評価がある。安川雄之助の退陣は、営利第一主義が改善されたと肯定的に評価されている。定年制は、古い伝統の精算や、財閥人事の近代化や、新時代への適応能力強化や、三井合名の持株会社化という肯定的評価がある。株式公開は、一方では利益を独占しているという財閥批判を緩和するためだが、他方ではプレミアムつきで株式を販売して重化学工業化の事業資金を調達するためだと考えられている。しかも株式の売却先は財閥内部の企業に集中しているので、直系企業に肩代わりさせただけの偽装だと評価されているが、借入金でなく株式売却で資金を調達したのは財閥を世間に開かれたものにするためだとの評価もある。 2021年の研究で永谷健は池田成彬による三井の財閥転向を、過激化する財閥批判を緩和して収束に導いた「驚くほど効果的な策」であり、独善的な財閥というイメージを国益や大衆を尊重する財閥というイメージに変えたと高く評価している。三井報恩会により利他的で献身的な国家報恩の三井財閥というイメージを創り、株式公開で大衆が株主として三井財閥に参画できるようにし、三井一族の辞任と定年制で経営権を大衆に開き、財閥と大衆の「浸透的な融和」を目指したと評価している。ただし左翼の批判には対応しなかったので、従業員と労働者の待遇改善はなかったと述べている。
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