着陸候補地の選定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/20 21:05 UTC 版)
NASAのアポロ着陸候補地選定委員会(Apollo Site Selection Board、ASSB)は1968年2月8日、5つの有力な着陸候補地を発表した。それらはルナ・オービター計画の5機の無人探査機が撮影した月面の高解像度写真、ならびにサーベイヤー計画で得られた月の表面の状態に関する情報に基づき、2年間かけて行われた価値ある調査の結果であった。地上に設置されたどんなに優れた望遠鏡でも、アポロ計画に要求される解像度で月面の特徴を解像することはできなかった。宇宙船が消費する推進剤の量を最小限に抑えることが要求されたため、着陸地点は月の赤道に近い場所でなければならなかった。さらに、機動的な飛行を最小限度に留めるために障害物のない開けた場所であることが求められ、着陸用レーダーのタスクを簡素化するために平坦であることが同時に求められた。科学的な価値は考慮に入れられなかった。 地球上で撮影された写真から有望そうに思えた領域は、そのほとんどがまったく許容できない場所であることがわかった。当初の要件はクレーターのない緩やかな場所だったが、そのような場所はひとつも見つからなかった。結局、5つの地点が候補地として検討された。地点1と地点2は静かの海に、地点3は中央の入江に、地点4と地点5は嵐の大洋にあった。最終候補地の選定は以下の7つの基準に基づいて行われた。 比較的にクレーターの少ない、滑らかな場所であること。 進入路について、広い丘、高い崖または深いクレーターが原因となって、着陸用レーダーを混乱させ、計器の数値を読み誤らせるおそれのないこと。 最小限の量の推進剤で到達可能であること。 打ち上げ時の秒読みの遅れを許容できること。 自由帰還軌道(月に向かう進路上で問題が発生したとしても、エンジンの噴射を一切することなく、そのまま月の周囲に沿って惰性飛行して安全に地球に帰還する軌道)を取れること。 着陸進入時に良好な視界を保てること。つまり、太陽が常に月着陸船の後方7度から20度の間の方向にあること。 着陸する領域において一般斜面が2度未満の傾斜であること。 このうち太陽の角度に関する要件は特に制限的で、これによって打ち上げ日は1か月につき1日にまで制限されることとなった。宇宙飛行士が体験することになる温度の極値を制限するため、夜明けの直後に着陸することになった。ASSBは地点2を着陸予定地点に選出し、地点3と地点5は打ち上げ日が遅れた場合の予備の地点に選ばれた。1969年5月、アポロ10号の月着陸船は地点2から15キロ以内を飛行し、地点2は着陸予定地として容認できると報告した。
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