白屋地区地滑り問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/23 16:19 UTC 版)
ダムは2002年(平成14年)に本体が完成し、試験湛水を行い2003年(平成15年)に完成する予定であった。しかし試験湛水中の4月25日、川上村白屋地区で斜面に亀裂が発見された。住民からの通報により国土交通省は直ちに計器類を設置するなど監視を行い、5月11日には試験湛水を中断した。だがその後も亀裂は拡大し、白屋地区では家屋に亀裂が入るなど深刻な状況となった。事態を重視した川上村・川上村議会・川上村議会ダム対策委員会は国土交通省に対し抜本的な対策を要望、7月には特に亀裂が深刻な6戸について仮設住宅への移転を開始した。 川上村の紀の川流域における地盤については、かねてから脆弱性が指摘されており、地滑りの危険性は1974年頃には既に金沢経済大学の吉岡金市や和田一雄らから問題提起されていた。実際に1967年には上流の大迫ダム建設地点で地滑りが発生しており、建設を強行しようとした農林省と川上村住民が小競り合いを起こしてもいた。建設省は地滑り対策について1999年(平成11年)に「貯水池斜面対策検討分科会」において深度50mまでのボーリング調査を行い、過去に地滑りを起こした形跡がない事、脆弱な地盤は範囲が狭いなどの検査結果を示した。これを基にして現在深度50mまでの地滑り域に対する恒久的地滑り対策を実施している。 だが、公共事業の問題点追求を全国的に展開している「国土問題研究会」などは建設省(国土交通省)の対応について、地滑り危険度や地滑り対策の十分な検討を待たずに建設を急いだ事、亀裂が発生した後直ちに湛水を中止しなかった事などを厳しく非難している。白屋地区住民は全戸の永久移転を7月には要望し、10月末には国土交通省も白屋地区の土地買い上げと全戸移転を骨子とした補償策を受け入れたが、現在に至るまで恒久的移転は実現していない。この事についても厳しく糾弾を行っている。また、大滝ダムだけに依存しない治水対策の必要性も訴えている。具体的には狭窄部を開削し湛水被害を防ぐ事や、下流部の内水氾濫対策などを行い水害の危険度を分散させ、治水安全度を高めることでダムへの治水依存を軽減させるというものである。 当初の建設事業費は230億円とされていたが、現在では3640億円まで増額されている。
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