産業政策の理論的基盤
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/10 05:33 UTC 版)
石油危機以降、日本をはじめとした先進工業国各国では、経済成長率の鈍化が起こり、新興工業国の追上げなどによる需給構造の急激な変化もあって、産業調整を促す要因が増大した。第一次石油危機後、OECDでは、1978年のOECD閣僚理事会で積極的産業調整政策に関する一般方針が採択されるなど、政府の関与によって積極的に産業構造の転換を図るべきであるという考え方が採られるようになった。 経済学者の村上泰亮は、産業政策を「『費用逓減傾向』が見込める産業は、その成長可能性を維持し高める直接的手段」としている。村上は、国家経済を主導する産業を見出すのは「官僚組織」の責務であるとしている。村上は産業政策の具体的なものとして、保護貿易政策、補助金政策、各種経済計画、価格規制などを挙げている。 経済学者の若田部昌澄は「理論的には、政府主導で産業を創出することがまったく効果がないとは言えなくもない」と指摘している。 しかし、こうした可能性はしばしば保護主義的な政策を正当化するのに利用されることがあるという問題もある。そもそも「将来発展する産業が何かということは、民間では分からないのに政府なら分かるということはないはずだ」という産業政策に対する根本的な批判意見もある。 経済学者の岩田規久男は「政府は税・補助金を用いて、特別な投資・消費を促進させたり、特定の産業を促進させないことが産業政策の哲学である」と指摘している。 経済学者の竹中平蔵は「政府が産業を直接育てるということではなく、その産業が育つ環境をつくることが重要な役割となる。具体的には、競争の促進、それを支える人材を育てるための教育制度の整備が必要である」と指摘している。 経済学者の野口悠紀雄は「経済成長は、基本的には民間企業と市場によって実現される。政府の役割は、そのプロセスを邪魔しないように環境を整備することである。具体的には、規制緩和であり、補助金・助成金など従来型保護政策からの脱却である」と指摘している。 みずほ総合研究所は「衰退産業が退場する際の『痛み』を緩和させるための施策は必要な場合もあるが、それを保護し『延命』させるための施策は、結果として国全体の国際競争力を削ぐことになる」と指摘している。
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