王朝時代以前
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/03 09:51 UTC 版)
ウマイヤ朝以前の建築については、詳細には分かっていない。最初の、そして最も重要なイスラーム建築は恐らくマディーナにかつてあったとされる預言者の家(フランス語版)であろう。イスラームではどこででも祈りを捧げることができると考えられているが、この半ば伝説的な建物はムスリムたちが祈るために集まった最初の場所であったと思われる。預言者の家は、多柱式の礼拝空間、礼拝の方向を示すキブラ、人々を酷暑から守る日陰という3つの要素を持つ、イスラーム建築におけるモスクの原型となった。祈りへと適用されたこの形式は無から生まれたわけではない。フサ寺院(イエメン、2世紀)もしくはドゥラ・エウロポスのシナゴーグ(フランス語版)(245年に改修)が発想の源となっていた可能性がある。腐食しやすい建材(木材と練土)で建てられていたため預言者の家が残っていた期間は短かったが、アラブの史料で詳しい描写が行われている。こうした叙述はかなり後の時代のものであり、どの程度実物に忠実であるのかは明らかではない。預言者の家の跡地と推測される場所には預言者のモスクが建っている。 イスラームの初期の物品をそれより前のサーサーン朝、ビザンツ帝国などのものと区別することは非常に難しく、これはウマイヤ朝に関してもそうであるが、美術品の産出で知られる諸帝国に取り囲まれていた地域で誕生した。初期のイスラームの芸術家たちが近隣諸国と同じ技法とモチーフを用いたのはこのためである。釉を施さない陶器の大量の産出が知られており、銘からイスラーム時代のものと特定できるルーヴル美術館蔵の有名な小碗もそのことを示している。この碗は、イスラーム以前からイスラーム世界への移行をたどることの出来る数少ない発掘地点であるスーサから出土した。
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