父子対決
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/11 06:38 UTC 版)
男児が七歳になるころ、残された金の指輪が彼の指にちょうど合うようになってきたため、彼は言いつけ通り小舟に乗りアイルランドへと漕ぎ出した。彼を乗せた小舟がアイルランドへと近づいた頃、アルスターの人々はちょうど足跡の浜と呼ばれる海岸に集まっていた。彼らの目の前で男児はスタッフスリングを使って鳥を撃ち落とした。撃ち落とされた鳥は不思議なことに生きており、男児は鳥を空に放った。彼は再び鳥を撃ち落とし、そして鳥を蘇らせた。年端の行かぬ異郷の子がそのような芸当をやってみせた事がコンホヴァル王を驚かせた。子供にさえにそのような技術を仕込んだ土地から十分訓練を積んだ丈夫がやってくるような事があってはアルスターは一たまりもない。そう考えた王は使いをやって彼を追い返すことに決めた。 最初に選ばれたのは口達者が評価されたコネレ・マク・エハハであった。コネレは男児を懐柔しようと呼びかけたが彼は聞く耳を持たなかった。次に男児の元に向かったのは「私の命ある限りアルスターの誇りが損なわれることは無い」と宣言したコナル・ケルナハ(英語版)であった。男児がスリングで石を空へと放り投げると雷鳴がコナルを襲い彼は転倒した。コナルが起き上がる前に男児は彼を盾の紐で縛り上げてしまった。(この雷鳴を呼び起こす不思議な技について、『アイフェの一人息子の最期』はその名を説明しない。しかしセイヤーズは、別の説話においてクー・フーリンが torannchless 〈雷の技〉を使用していることを指摘し、コンラの技はこれと同種の物ではないかと示唆している。) いよいよクー・フーリンが男児の元へと出向く事となった。事情に通じていたクー・フーリンの妻エウェルは彼を引き留め、男児は彼とアイフェの間の息子コンラであることを伝え、彼にとっても一人息子であるコンラと対決してはならないと訴えた。しかしクー・フーリンは男児が自らの子であったとしても、アルスターの誇りのため彼を殺すつもりだと答え、彼女を退けて海岸へと向かいコンラと対峙した。クー・フーリンは自身の名を明かさねば死ぬこととなると最後通告を行ったが、これも聞き入れられず父子の対決が始まった。最初は剣で、次は組み打ち (imthrascrad) で戦い、最後には海で互いを溺れさせようとしたが、いずれもコンラが優勢であった。そこでクー・フーリンはスカータハが彼のみに授けた槍ゲイボルグでコンラをだまし討ちした。槍を受け、コンラのはらわたは足元にこぼれ落ちた。 虫の息のコンラを連れてクー・フーリンはアルスター人の元に戻り、彼が自らの子であると彼らに紹介した。コンラは自らがアルスターに参加していれば、5年もあれば敵を全て倒し、その王権は遥かローマにまで届くところであったと惜しみ、アルスター人たちに別れの挨拶を告げた後に事切れた。彼の墓が建てられた土地はこれに由来して Airbe Rofir (偉大な男の足跡)と名付けられた、と『韻文のディンシェンハス(英語版)』は伝えている。
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