水質改善が芳しくない理由
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/05 14:53 UTC 版)
佐鳴湖の水質改善が容易でない原因として、水深の浅さと水の入れ替えが悪いという佐鳴湖の地理的性質が災いしていること、流域開発による湧水の減少や下水道整備で生活排水の流れ込みを防いだことで上流からの流入水量そのものが減って水の入れ替えが悪くなったこと、生活排水以外に窒素・リン濃度が高い水源があること、下流域からの逆流水によって汚れが持ち込まれている可能性もあること、なども指摘されているが、原因は十分に解明されていない。 佐鳴湖は水深が約2メートルと浅い上に水が滞っている時間が長い(単純滞留日数46日)ため、日照により水温が上昇して、植物プランクトンなどの増殖速度が加速する。また、水深が浅いことで底泥からの栄養塩溶出の影響が強く出る点でも不利に働くと考えられている。 有機汚濁物質のほとんどは植物プランクトンが生産していると考えられている。植物プランクトンが窒素やリンを吸収して活発に光合成を行うと、プランクトン自体やその放出物などの有機物が大量に発生して汚濁が進行する。こうして生産された有機物は、一部は動物プランクトンに食べられ食物連鎖を通じて消費される。また、一部は湖底に沈澱する。有機物が分解される際に酸素を消費するため多くの湖で貧酸素状態を生むが、佐鳴湖では水深が浅いことが幸いして深刻な貧酸素状態になることはない。また、底泥中での脱窒反応により有機物が消費される際には硝酸イオンも消費されるが、還元的条件下ではリン酸イオンは底泥から溶出する。佐鳴湖でも盛んに脱窒反応が進行していると推定されているがその正確な規模は不明である。 下水道整備(行政による整備)は進んだものの、期待されたほどは接続率が伸びていないため生活排水の流れ込みの抑制が実現できていない。法制上は下水道法などで接続の義務はあるものの、罰則規定がないなどの理由で他地域でも同じ問題が発生しており、この問題の解決は容易でない。
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