民間における調査研究
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 22:45 UTC 版)
「千日デパート火災」の記事における「民間における調査研究」の解説
本件火災の調査研究は、公的機関以外に民間でも調査研究が行われた。代表的な例として「防災都市計画研究所」および「MANU都市建築研究所」が合同で行った調査研究が挙げられる。その成果は一冊の報告書「千日デパート火災研究調査報告書・防災の計画と管理のあり方を検討する(村上處直、高野公男著)」にまとめられた。本件火災は、人的被害および物的被害が甚大で未曾有の大災害であったが、そのなかにおいて63名の生存者がいたことで、公的機関による調書や報道インタビューから多くの証言が得られた。そこを手掛かりに火災の時間的な経過を出火場所、1階保安室、7階プレイタウン、消火救出活動に分け、時系列的に各所における人々の行動や事象をすり合わせて検証することが可能な事例として詳細な調査研究が期待された。従来の日本の火災調査では、原因や死傷者数、損害などについて詳細に述べられるのが定番だったが、延焼中の建物内における人間の動きや煙の充満過程など、実際にどのようなことが起こっていたか、時系列的に検討された報告書は無かったという。 本調査研究では、実際に調査員らが鎮火直後の火災現場に赴き、写真撮影を含めてデパートビル内を綿密に調査し、報道や証言などを加味しながら本件火災を多角的に検証した。現地調査は2度にわたり行われた。特に重視されたのは、人々が実際に7階プレイタウン内で取った避難行動を解析し、建築構造的にどのような対策を立てれば火災時に避難を円滑にして人的被害を最小にできるのかについての検討である。調査研究の成果から、防災計画についての新たな方策や知見が得られたことから、以降の超高層ビル建設などにその成果が活かされることになった。火災に際して煙の流入と拡散を建物の空間に及ぼさない、または煙の拡散を可能な限り遅らせることが人命を守るうえで重要であることから、本件火災以降の超高層ビルの建設にあたっては、避難階段や廊下を加圧すること、ダクト内の防煙ダンパーを確実に作動させることの概念が普及し、加圧防煙システムが取り入れられるようになった。
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