概念と設計
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/20 01:49 UTC 版)
アメリカ軍が基地から離れた地点に大規模な強襲揚陸作戦を行う際に、ウェルドックとLCACを備える従来の強襲揚陸艦では艦の数と規模が限られ小規模な作戦しか行えない。大規模な揚陸作戦は港湾を利用する必要があるが、多くの場合は外国の領土であり政治的な問題が避けられない。そこで海上に兵站基地を設けるシー・ベイシング(英: seabasing)の概念が提唱されるようになった。アメリカ海兵隊の装備を積み即応体制にあるRO-RO船タイプの海上事前集積船隊輸送艦からLCACやヘリコプターなどへ兵員や装備を移動させることができれば従来の問題を解決できる。このために導入されるのがMLPである。兵士や装備は喫水の深い大型輸送艦から、「海上の桟橋」として機能するMLPを介して直接揚陸作戦を行うLCACやヘリコプターに乗り換え任務に向かうことになる。 ジェネラル・ダイナミクスによる初期デザインでは、6隻のLCACを備え2隻のLCACを同時に運用(ドック入り、荷下ろし、積み込み、発進)できるものだった。輸送艦からMLPへの移動には折畳式ランプを持つカーゴテック(Cargotec)社のテスト・アーティクル・ビークル・トランスファー・システム(英: Test Article Vehicle Transfer System)が予定されていた。この設計案のMLPは旅団規模の兵力を収容でき、速力は20ノット (37 km/h; 23 mph)で最大航行距離は9,000海里 (17,000 km; 10,000 mi)、1隻あたりの建造費は15億ドルと見積もられていた。 将来の予算削減が不可避となったため2009年に計画は縮小された。ジェネラル・ダイナミクスは子会社のナショナル・スチール・シップビルディング社(NASSCO)が建造しているアラスカ級石油タンカーを元にした設計を提案した。FOFO船(英: float-on/float-off ship)であるためLCACの発着艦のために甲板高さを調節できる。広く低い中央甲板に車両待機エリアとサイドポート・ランプ、防舷材、LCACレーンを備える。コスト削減のために輸送艦との車両移動についてはテスト・アーティクル・ビークル・トランスファー・システムの採用は中止されサイドポート・ランプに変更し、ヘリコプター運用能力も削除、さらに装備するLCACも3隻に削減された。載貨重量トン数は60,000メトリックトン以上になる。1隻あたりの建造費は5億ドルとなる。
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