柔軟性と防御効果
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/10 09:43 UTC 版)
鎖帷子の大きな特徴は、金属板を成形して作られた鎧と比べ堅牢さでは劣るが簡単に製作可能でかつ柔軟性に優れ、また皮革を煮固めて作られた鎧と比べると高い防御効果を持つ事である。身体の動きに対応するので警戒活動など戦場以外での行動にも適することから長時間着用しての軍事活動が可能となる。とは言え全重量が肩に掛かるという欠点もあり、腰にベルトを付けるなどして重量をいくらか分散したとしても、着たまま生活できるほどではない。 鎖帷子は皮革の鎧と比べ刃物に対して防御効果を示す、例えば刀剣による斬撃の威力を削ぐことができる。槍などの突刺す武器にも有効であったし、ロングボウやクロスボウ以外の矢の飛ぶ速度が比較的遅いショートボウにも効果があった。しかしその構造上、鎖の隙間を狙うエストックやアールシェピースなどには効果がなかった。また、メイスや戦鎚などの鈍器による衝撃を緩和する効果はない。また、剣を叩きつけられた打撃でもダメージを負う他、剣の当たり具合が良ければ斬り裂かれることもある。槍で鎖の輪が割れることもあった上に、両手剣や戦斧、メイスやウォーハンマーといった重量のある武器の打撃には弱かった。 しかし、硬い鉄板の鎧に比べて、矢や弩(クロスボウ)、銃弾に対する効果が高かった。 このような性質から、鎖帷子は現代においても防刃着として用いられる場合がある。その場合、ボディアーマー(防弾ベスト)との併用が行われる。ケブラー製のボディアーマーは、弾丸を繊維で絡め取る為非常に効果的だが、分散緩和する形で衝撃をストップさせる為、刃物で刺されたり、弾丸でも尖った弾頭や細く鋭い高速弾頭が使われた場合は防げない。それを補う意味で、ケブラー繊維同士の間に鎖帷子を挟み込み、その防御力を向上させるのである。2006年現在は、強化樹脂製の防刃パネルを併用する場合が多い。 そのまま素肌に着ると、跡が付く、冷たい、肌がこすれる、汗で錆びる、着用者によっては金属アレルギーを発症するなどの難点があるので、金属鎧と同様に、下に柔らかい布製の鎧下を着用する場合が多い。この鎧下は防寒や防暑などのほか、打撃武器や斬撃武器の衝撃を緩和する意味合いも強い。隠密行動に携わる人間が着用する場合は、塗料や煤で黒く塗り光を反射しないようにしたり、二枚の布に挟み込んで、金属同士がこすれる音を低減させたりしたと言われている。
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