旧民事訴訟法下
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付着物が検問で見過ごされた不自然性をなおも訴える原告側は、そもそも「検問表」などの証拠資料が起訴時点で検察官の手元に存在しなかった可能性も、新たに指摘した。そして、本件の被疑事実に関する送致書・書類目録および関係書類追送書につき、旧民事訴訟法第312条第3号の定める「法律関係文書」および「引用文書」に該当するとして、文書提出命令を申立てた。しかし1997年6月9日に東京高裁は、本件各文書は法律関係文書にも引用文書にも該当しない、として原告側の申立てを却下した。 却下決定によれば、旧民訴法第312条第3号の定める「法律関係文書」とは、挙証者=所持者間の当該法律関係それ自体、あるいは法律関係の基礎・裏付けとなる事実を明らかにする目的の下に作成された文書を指す。そして、文書の所持者が専ら自己使用の目的で作成したような、いわゆる「内部文書」は法律関係文書に該当しない、とする。 原告側は、捜査資料についても捜査・逮捕によって自由の制約が生じる点で「捜査法律関係」が成立する、として本件各文書も法律関係文書に含まれると主張していた。また、送致書・書類目録は弁解録取や勾留理由開示手続きなどに利用されるもので、挙証者と所持者らの共同の目的・利用のために作成された「共通文書」であって内部文書ではない、とも主張していた。しかし決定は、送致書・書類目録や関係書類追送書はいずれも、警察=検察官間で送致の手続き・内容を明確化し、事件処理を円滑化するための連絡用内部文書に過ぎない、とした。 この決定は、捜査資料が「捜査法律関係」文書に該当する、として提出命令申立てを容認する近時の裁判傾向に対し、伝統に立ち帰って「法律関係文書」を狭く解釈する先例的意義を認められている。
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