日本最大の地衣体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/07/09 08:18 UTC 版)
和歌山県古座川町の古座川沿いにある一枚岩は、その名の通りに巨大な岩面が大きく広がる名勝として知られるが、この岩面に巨大なヘリトリゴケが生えているのが発見された。これは国内の地衣類では最大のもので、同時に最長命のものである。あるいは世界最大最長命かも知れないとも言われる。 具体的に調査がなされたのは2001年のことである。それ以前から遠目にずいぶん大きい地衣類らしきものがある、ということは一部で知られていたらしい。しかし何しろ巨大な絶壁であり、簡単には接近できなかった。この調査は地主全員の承諾を確認の上で、古座川町役場職員の立ち会いの下で行われたとのこと。断崖の上の森林からザイルを下ろし、それぞれの地衣体の輪の大きさを測定したところ、その径が1mを超える程度の大きさのものが12もあり、最大のものは縦径1567mm、横径1845mmあった。それぞれ不規則ながらもほぼ円形から楕円形の輪郭を持っていた。 一般に痂状地衣は特に不対称な環境でなければそのコロニーは一定速度で円形に広がってゆくものと考えられる。つまりその径は年齢に比例することになる。梅本他(2001)の報告ではその成長速度を年間で0.1mmから1mmの間と判断して、900~9000歳程度との推定値を出している。中村他(2002)では北アメリカでのこの種の成長速度のデータ(年生長0.7mm)を用いて、1318歳という推定値を示している。 このように大きなものが、しかも大きさの揃ったものが並んでいる、というのは奇妙であるとの指摘もされている。同じくらいの大きさであると言うことは、それらが同じ時期に定着したことを示すから、要するに岩の表面が定着可能な状態になったときに一斉に定着した、というのが一つの回答かもしれない。 しかし、もしも途中に他のコロニーと接していれば、当然そこで成長が止まったり形が変になったりするはずで、このようなものが見られるためには、それ以降の定着が多いと困る面がある。実際、そこにはより小さいコロニーがあまり見られないとのこと。しかしこれらがここに定着したときにはそれが可能であったのに、それ以降はそれが困難になった、と言うのはどう見ても変である。これらの疑問は今後の検討を待つことになるだろう。
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