日本のピカレスク小説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 05:06 UTC 版)
「ピカレスク小説」の記事における「日本のピカレスク小説」の解説
現在でもピカレスクは世界各国で盛んに愛読されており、日本国内でも新作が発表され続けている。 日本のピカレスク小説も上述してきたような性格付けを受けた人物を主人公や重要人物として物語が展開される。このような人物が、暴力・犯罪の現場や経済市場などにおいて、時に激しく時に華麗に、一般的に悪と言われる行為を行ってゆき、一度は成功を収めるものの、結末において零落・破滅するのが和製ピカレスクの基本フォーマットとなっている。「光クラブ事件」に材を取った高木彬光の『白昼の死角』などがその典型である。また、欧米の作品と比較すると、宗教的背景や社会・文化的背景、生活感は比較的希薄である一方、ハードボイルド、ニヒリズム、ダンディズムと密接に結びついている場合が多い事も、特徴として言える要素である[要出典]。 他方、主人公の悪漢が巨悪や猛悪に立ち向かうという構図で描かれる物語の場合、主人公が行う悪の行為は、結局は「正義のイメージ」のみを持ち、結末に至っても主人公が生き残るというパターンが、かなりの割合で存在するのも和製ピカレスクの大きな特徴と言える。 日本でピカレスク小説で知られた作家には、今東光、阿佐田哲也、大藪春彦、馳星周などが 。馳星周の作品については、人間の暗部を深く抉るように描写して行く傾向が色濃く、アメリカのジム・トンプスンなどに代表される暗黒小説に色分けすることもできる。 また、これらとは別に、悪漢を主人公とした軽いタッチの「ピカレスク風」とでも呼ぶべき小説も様々な作家によって多く書かれている。生島治郎の『悪人専用』や『暗黒街道』などがその例として挙げられる。また、スポーツ新聞や男性週刊誌などに連載される官能小説でも、色事師や結婚詐欺師といった悪漢を主人公としたピカレスク小説の要素を持つものが存在していた。これらは本来のピカレスク小説に比して娯楽小説の要素が強い。 また、上述してきたような性格のキャラクターを物語の中核に据えた時代小説も少なくない。藤沢周平の『天保悪党伝』もその典型例で、講談の『天保六花撰』を元に書かれた日本版悪漢小説である。
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