新司法試験の合格率
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/09 14:04 UTC 版)
「法科大学院定員割れ問題」の記事における「新司法試験の合格率」の解説
法科大学院制度の創設を提言した司法制度改革審議会意見書では、「法曹となるべき資質・意欲を持つ者が入学し、厳格な成績評価及び修了認定が行われることを不可欠の前提とした上で、法科大学院では、その課程を修了した者のうち相当程度(例えば約7~8割)の者が後述する新司法試験に合格できるよう、充実した教育を行うべきである」との記述があり、法科大学院修了者の新司法試験合格率は7~8割というのが制度設計時における目標とされていた。しかし、実際の法科大学院設立認可にあたっては準則主義(一定の基準さえ満たしていれば設立が認可される仕組み)が採られ、法学部を抱える大学の多くが「法科大学院のない大学では学生に見向きもされなくなってしまう」などの理由で次々と法科大学院を設置したことから、最終的に法科大学院を設置した大学は74校、入学定員総数は5千人を超えることになり、司法審の提言どおり司法試験合格者数が年間3,000人に達したとしても、合格率7~8割という目標の達成はほとんど不可能となっていた。さらに、司法試験委員会は合格者の質の低下を問題視し、新司法試験の合格者数を年間2,000人程度にとどめたほか、試験の施行を続けるほど滞留受験者が増加し合格率が引き下げられることから、実際の新司法試験合格率は平成21年以降全体で3割を切る状態となった。また、新司法試験における合格者数は名門大学出身者に著しく偏っており、新司法試験合格率が5割を超える法科大学院もあれば、逆に合格率が1割未満の法科大学院もあった。当然ながら、新司法試験の合格率が低い法科大学院は受験生に敬遠され、大幅な定員割れを起こしているほか、学生募集停止に追い込まれたところも少なくない。法科大学院を修了すると「法務博士(専門職)」という学位が授与され、5年間に3回まで(平成27年以降は5回まで)新司法試験を受験することができるが、その期間内に合格できなければ受験資格を失ってしまう。司法試験の受験資格を喪失した法科大学院生は、俗に「三振博士」「三振法務博士」などと呼ばれ、予備試験に合格するか法科大学院に再入学しなければ再度司法試験を受験することはできない上に、年齢等の問題から一般企業等に就職するのも難しく、いわゆるワーキングプアやニート、引きこもりといった状態になってしまう者も少なくないと言われている。法科大学院の志願者数減少は、このような「三振博士」リスクが世間にも認知されるようになった結果であるとし、新司法試験の合格率を上昇させれば問題は解決するとの主張もみられるが、これに対しては現状でも新司法試験合格者の質の低下は大きな問題となっており現状のまま合格者数を引き上げるわけにはいかない、旧司法試験や予備試験は新司法試験よりはるかに合格率の低い試験であるにもかかわらず多くの受験者を集めていることから、司法試験合格者数の低迷が主たる原因ではないとの反論もある。
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