文学と法学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/16 01:49 UTC 版)
「イスラーム世界の少年愛」の記事における「文学と法学」の解説
文学は、美少年へのそれを含む愛に魅惑されるイスラーム文化のあり方を反映する。イスラーム文学史上の全てとは言わないまでも、そのほとんどにおいて、愛はまさしく愛であったのである。ウルドゥー語詩人ハズラト・モハーニーは「愛は全て無条件によし」という。恋人たちはこの文脈において殉教者であり、英雄と考えられた。恋人たちの狂気、不合理、忘我、そして常に乾ききりいずれ死に至る願望、欲求は、「イシュク」として現れ称賛されたのである。アラビア語の俚諺に言う。「イシュクは愛する者以外、全てを焼き尽くす劫火である」と。 少年愛の主題は散文にも多く現れるが、文化に最も多くの印を刻んだのは一貫して詩・韻文のジャンルであった。このトポスはイスラーム期のイベリア半島から北インドに及ぶものである。イベリア半島では、たとえばイブン・ハズムの「鳩の頸飾り」、エジプトではシャムスッディーン・ムハンマド・イブン・ハサン・アル=ナワージーの「ガゼルの草原」、バグダードではアラビア語詩人でも第一に名の挙がる「恐るべき人の子」アブー・ヌワースや、ペルシア語ではサアディーの「薔薇園(ゴレスターン)」、北インドのウルドゥー語詩ではミール・タキー・ミールやミールザー・ガーリブなどがいる。 預言者のハディースおよび法学上の学者たちの議論のなかにも、少年愛の慣行を言明して規制するものがある。シーア派のテクストでは男性が「少年との性的交渉を持った場合、少年が未成年であろうとも男性による少年の母、姉妹、娘との婚姻は違法である。また少年との性交に先立って、先述の女性らのいずれかと婚姻関係にある場合については婚姻関係に影響を及ぼすものではない。しかし、このような関係は避けるべきである」とある。また未成年者との関係についても言及し、行為者が成年男性であり、被行為者が未成年である場合は、適法ではないという明確な見地から好ましからざることであるとされる。またこのさい行為者の娘、兄弟姉妹は被行為者に対する責を負うことはない。 スンナ派でもこのような慣行に関して言及がある。四大法学派の一つマーリク法学派の創始者マーリク・イブン・アナスによれば「アムラード(青少年、髭のないもの)と性交は、未婚あるいは旅にある者についてはよい」とされる。 ハディースには非常に厳格なものもある。アブー・ダーウードの伝えるスナン(スンナの複数形)によれば「少年との同性愛関係をもった者。行為者、被行為者とも死」とするハディースがある。
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