文化地理学の再物質化と「新しい唯物論」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/10 08:27 UTC 版)
「文化地理学」の記事における「文化地理学の再物質化と「新しい唯物論」」の解説
「新しい文化地理学」の言語的なもの、表象的なものを偏重する性質は反発を生み、1990年代後半から2000年代初頭ごろより物質的なものや視覚的なイメージに注目する新たな展望が生まれ始める。これを物質論的転回(英: Material turn)と呼ぶ。ジャクソンは、2000年の「社会・文化地理学を再物質化する(英: Rematerializing social and cultural geography)」において、現代社会におけるローカルなものとグローバルなものが複雑に絡み合ったネットワークが、空間や場所を作り上げる歴史的過程を取り上げた。物質的な要素に注目するという側面において、ジャクソンの論文はバークレー学派の文化地理学と一致している。しかし、後者があくまで物質を人間によって作られ、使われる受動的な存在として扱うのに対して、前者における物質は、人間の諸関係を作り出す能動的な存在である。 2000年代に顕著になった物質論的転回の傾向は、「新しい唯物論(英: New materialism)」と呼ばれる研究群として形をなした。このアプローチはアクターネットワーク理論、アジャンスマン(英語版)の概念、ポスト人間主義(英語版)などに基づく研究と関連している。「新しい唯物論」の研究群は、マルクス主義、ポスト構造主義、フェミニズム、ポストコロニアル理論など様々な分野の研究成果の影響を受けており、単一の存在論、認識論、方法論を共有するものではないものの、社会生活の構築において物質が果たすパフォーマティブな役割への関心と、物質の生き生きとした性質および行為能力の評価の評価について関心を持っているという点で共通している。
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