バークレー学派の文化地理学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/10 08:27 UTC 版)
「文化地理学」の記事における「バークレー学派の文化地理学」の解説
文化地理学を地理学の一部門として体系化したのはカール・O・サウアーとその同僚、いわゆる「バークレー学派(英: Berkeley School)」である。彼らは文化を「超有機体」的な存在であると位置づけ、人間の考えや行動を規定する鋳型として機能すると考えた。サウアーは1925年に「景観の形態学(英: The Morphology of Landscape)」を発表し、特定の文化をもつ集団が、文化を営力として自然景観に作用することで文化景観が形作られると論じた。彼の理論は、20世紀初頭の地理学において優勢であった、自然環境が地域性を決定すると考える、環境決定論への反論でもあった。 このアプローチの文化地理学においては、農村の文化景観要素が一般的なテーマとして扱われることが多く、例えば農法の伝播、農耕の様態、建築や楽器をはじめとする民芸の様式の分布とパターン、文化固有の土地利用慣行といったものが挙げられる。サウアーは1920年代なかばから半世紀近くにわたりカリフォルニア大学バークレー校の教員として多くの後進を育成し、20世紀なかばには、サウアーらの地理学は文化地理学の代名詞とみなされるようになる。 バークレー学派の文化地理学を学問分野として明瞭に表した書籍として、1962年サウアーの門下生であるフィリップ・ワグナー(Philip Wagner)とマーヴィン・マイクセル(Marvin Mikesell)が編纂した『文化地理学リーディングス(英: Readings in Cultural Geography)』がある。ワグナーらは同著において文化地理学のテーマを「①文化」「②文化地域」「③文化景観」「④文化史」「⑤文化生態学」の5つに整理した。中俣均はこの5つのテーマは相互に関連したものであるとして、バークレー学派の地理学を ①文化を生活様式と捉える立場を基盤にして、特定の文化特性の面的広がりを捉えることによる②文化地域(あるいは文化領域)の確定や、そうした文化特性が地表上に織りなす③文化景観の特質を地域に即して描写し、それらの④文化史的位置づけを図る、そして最終的に⑤文化生態、すなわち文化景観が所与としての自然景観に対しての人間集団の能動的働きかけによる賜物であることを実証していく、という研究の一連の段階的手続きまたはプロセス であると概説している。
※この「バークレー学派の文化地理学」の解説は、「文化地理学」の解説の一部です。
「バークレー学派の文化地理学」を含む「文化地理学」の記事については、「文化地理学」の概要を参照ください。
- バークレー学派の文化地理学のページへのリンク